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公開日付: 2025年 9月 24日

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亀裂性堆積岩の水みちは亀裂部か岩石全体か
-北海道幌延における地下水流動の解析調査事例-

図1 亀裂が水みちとなる場合の有効間隙率の与え方

図1 亀裂が水みちとなる場合の有効間隙率の与え方

地下深部において亀裂の連結性が低いと想定される場合は岩石全体(隙間全体)を水みちとして扱う(※1)一方で、亀裂の連結性が高いと想定される場合は亀裂を水みちとして扱い(※2)、亀裂部の有効間隙率を算出しました(※3)。

図2 地下水流動解析モデル化領域と地下水移行時間の解析結果

図2 地下水流動解析モデル化領域と地下水移行時間の解析結果

(a)モデル化領域と着目地点の地質断面図、(b)地下水移行時間の解析結果:(1)声問層と稚内層浅部 に岩石全体の間隙率を与えた場合、(2)声問層と稚内層浅部に亀裂の間隙率を与えた場合を示します。

高レベル放射性廃棄物の処分地の選定過程における概要調査では、地下水の涵養*4域から流出域までを包含する数km〜数十kmの広域を対象とした地下水流動解析により、地下水の移行時間・経路が評価されます。地下水の移行時間を解析的に求める上で、岩盤中の地下水の流れる隙間の割合である有効間隙率は感度の高いパラメータです。

堆積岩ではボーリング調査における水理試験から得られた亀裂の透水性を岩盤の透水性として扱う一方で、岩盤全体の間隙率を有効間隙率として扱うなど、有効間隙率の与え方が明確ではありませんでした。

本研究では、北海道幌延町に分布する低透水性の岩石基質部に、亀裂の発達する堆積岩である声問層及び稚内層浅部を例として、亀裂の幅を基に推定した有効間隙率(図1)を用いた場合の移行時間を、ボーリング調査における地下水年代の評価結果と比較することで、有効間隙率の与え方を検討しました。本地域の地下深部については、解析モデル(図2(a))に用いた表層地形や地下水涵養*4量などの条件が現在の環境とは異なる条件で生じた地下水流動の結果であるため、図2(b)に示される解析結果のうち赤破線(枠)で囲まれる表層部に着目しました。その結果、亀裂の幅を基に推定した有効間隙率を用いた場合、ボーリング調査から得られた観測結果と整合的な比較的小さな移行時間が得られました。

低透水性の岩石基質部に亀裂部からなる水みちネットワークが形成される堆積岩の場合、亀裂の幅を基に有効間隙率を推定することが有効であることが分かりました。

*4 地下水の涵養とは、雨水などの地表水が地下に浸透して帯水層(水が蓄えられている地層)に水が供給されることをいいます。
謝辞
本研究は、経済産業省資源エネルギー庁受託事業「令和4年度 高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(JPJ007597)(岩盤中地下水流動評価技術高度化開発)」の成果の一部です。
著者情報
参考文献
宮川和也ほか, 亀裂性堆積岩を対象とした地下水流動解析における有効間隙率の与え方:北海道幌延に分布する声問層と稚内層浅部の事例, 原子力バックエンド研究, vol.31, no.2, 2024, p.82–95
外部論文: https://doi.org/10.3327/jnuce.31.2_82

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