公開日付: 2025年 9月 17日
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海産物の消費で人はどの程度被ばくするのか?
-東京電力福島第一原子力発電所事故前後の海産物摂取による内部被ばく線量評価-
図1 海産物摂取に関連した天然核種及び事故由来核種の環境中での移行経路
図2 事故後1年間における内部被ばく線量の95パーセンタイル値における各放射性核種の寄与
図3 1年間の海産物摂取による事故由来核種(90Sr、110mAg、131I、134Cs、137Cs、239,240Pu)からの内部被ばく線量の分布
世界における海産物の消費量は過去50年で倍増しています。その中で日本人は世界平均と比較して2倍以上を消費しており、海産物は私たちにとって非常に重要な食品です。一方、海底の地殻や原子力施設から海洋環境に流入し海産物に取り込まれた放射性核種は、消費者に内部被ばくを引き起こす要因にもなります(図1)。東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故以降、海産物摂取による内部被ばくは国内外に大きな社会的不安をもたらしました。
そこで本研究は、東北地方の成人を対象として、海産物摂取による内部被ばくが1F事故によりどのように変化したかを評価しました。考慮した核種は1F事故により環境中に放出された主な核種(90Sr、110mAg、131I、134Cs、137Cs、239,240Pu)のほか、天然核種である210Pb、210Po等を含む計23の核種としました。海産物中に含まれる放射性核種濃度の分布と、東北地方の成人の海産物消費量の分布をもとに、事故前10年間、事故後1年間、1~3年後、3~10年後の被ばく線量を計算しました。
事故後1年間の95パーセンタイル線量における各核種の寄与(図2)は、天然核種が98 %、事故由来核種が1.7 %となりました。事故由来核種からの線量(図3)は、事故後1年間で事故前の約4~6倍に増加しましたが、事故3~10年後には事故前と同等のレベルまで減少しました。よって、1F事故直後であっても内部被ばくへの事故由来核種の影響はわずかであり、かつ短期間であることが分かりました。
今後はこの結果をもとにして、将来的により効率的な海産物の出荷制限を検討するための情報提供を目標に、分析を続けていきます。
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