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公開日付: 2025年 11月 18日

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強地震時の建物浮上りに関する解析的検討
-建物浮上りに係る模型実験の再現解析-

図1 解析モデル

図1 解析モデル

表1 加速度波形比較

表1 加速度波形比較


原子力施設の耐震設計における地震時の基礎浮上り評価では、解析手法の妥当性を確認することが極めて重要です。建物が地震動により浮上って基礎の一部が地面から剥離し、再接地する際に大きな上下加速度(誘発上下動)が発生する現象は「建物浮上り問題」として知られています*。この現象は建物の耐力や構造安全性に関わるだけでなく、内部機器の応答にも影響を及ぼすため、重要な課題とされています。

しかし、接地率が低下した状態における力学的挙動は十分に理解されていません。本研究では、今村ほか(2013)*による粘土地盤を対象とした遠心振動実験を取り上げ、3次元詳細モデル(図1、解析モデル)を用いた再現解析を行いました。表1によると、付着無しケースは実験と良好に一致しましたが、付着効果があるケースでは、実験より早く付着が切れ、誘発上下動が過大となりました。感度解析により付着強度を増加させると、実験結果と整合する結果を確認しました。また、建物底面の土圧分布には解析と実験で差異が見られました。

以上により、誘発上下動は付着強度に強く依存し、応答評価を行う場合には底面土圧分布形状にも留意する必要があることを示しました。さらに、浮上り評価の解析手法を確立していくことにより、今後の耐震設計の高度化が期待されます。

*今村晃ほか,砂地盤及び粘土地盤に支持された直接基礎構造物の浮き上がり挙動,日本建築学会構造系論文集,vol.78, no.692, 2013, p.1759–1768.
謝辞
本研究は、原子力規制庁からの受託事業「令和3年度 原子力施設等防災対策等委託費(地震時に低接地率状態となる建屋の応答挙動に関する検討)事業」の成果の一部です。
著者情報
参考文献
Choi, B. et al., Analytical Study for Low Ground Contact Ratio of Buildings Due to the Basemat Uplift Using a Three-Dimensional Finite Element Model, Mechanical Engineering Journal, vol.10, issue 4, 2023, 23-00026, 11p.
外部論文: https://doi.org/10.1299/mej.23-00026

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