公開日付: 2025年 10月 22日
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フッ素のチカラで進化する金属の抽出技術
-効率と安全性を両立した新たな抽出法の開発で持続可能な社会の実現に貢献-

図1 (a)非フッ素系抽出剤と(b)フッ素系抽出剤の第三相生成挙動とナノスケール構造の違い
フッ素系抽出剤では、比重が大きいため下層が油相となります。
持続可能な社会を実現するためには、資源リサイクルが重要です。その中で、様々な金属を溶かした溶液から有用な金属を分離する「溶媒抽出法」が注目されています。しかし、高濃度の金属を取り扱う抽出操作では、プロセスの安全な運転を阻害する液相の相分離(第三相の生成)を制御することが長年の課題でした。
本研究開発では、フッ素の強力な疎水性に着目し、第三相を生成させない抽出システムを開発、そのミクロ構造を研究用原子炉JRR-3に設置されている中性子小角散乱装置SANS-Jにより解明しました。従来法である非フッ素系抽出剤による抽出システムでは、高濃度のジルコニウム(Zr)イオンを抽出すると油相で約350分子が凝集して巨大な分子集合体を形成し、やがて第三相が生成します(図1(a))。一方、開発したフッ素系抽出剤を用いた場合、高濃度のZrイオンを抽出させると、油相で約14分子が小さな分子集合体を形成します。その分子集合体同士がフッ素の疎水性により反発し合うことで、集合体の大きさを維持し、第三相が生成しないことを明らかにしました(図1(b))。
本成果は、これまで根本的な解決策が存在していなかった第三相の生成に対し、具体的な解決策を示すことに成功しました。開発されたフッ素系抽出剤は、金属イオン分離技術の高度化につながる可能性が高く、我が国の資源問題の解決への貢献が期待されます。
謝辞
本研究は、JSPS科研費(JP21K17911, JP23KK0096)の助成を受けたものです。
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参考文献
関連情報: フッ素のチカラで進化する⾦属の抽出技術―効率と安全性を両⽴した新たな抽出法の開発で持続可能な社会の実現に貢献―
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