公開日付: 2025年 10月 17日
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本物そっくりな気泡の運動を数値シミュレーションで再現する技術
-マルチフェーズフィールド法を用いた気液界面モデルの開発-
図1 マルチフェーズフィールド法を用いた気泡流計算結果
気液界面の移動現象を計算する界面捕獲計算にマルチフェーズフィールド法を用いることで、従来手法では困難であった気泡流解析が可能となりました。円管内気泡流解析において半径方向のボイド率と平均流速分布(水:liquid、気泡:gas)を実験結果と比較した結果、本計算が妥当な結果であることを確認できました。
本研究は、気液二相流シミュレーションにおける課題「気泡が数値上で近づきすぎると“勝手に合体してしまう”問題」に着目し、その解決手法としてマルチフェーズフィールド(Multi-Phase Field : MPF)法を開発したものです。従来の手法では、気泡が近接すると自然に合体してしまい、実験で観察される気泡の挙動と異なる流れが形成されてしまいます。そこでMPF法では、気泡ごとに独立した位相関数を割り当てることで、不自然な合体を防ぎ、気泡の個別性を保持します。
さらに、数百個の気泡を扱う際の計算負荷を軽減するため、Ordered Active Parameter Tracking(OAPT)法を導入しました。これは、必要な計算要素だけを効率的にメモリ上に管理し、従来の単純な実装と比べて記憶領域と計算時間を大幅に削減する工夫です。
提案手法の妥当性を確認するため、垂直管内における気泡流を対象に、Colinらの実験結果と比較しました。得られた気泡の分布や、水及び気泡の速度分布が実験データと良く一致しました(図1)。これは、数値モデルが実物と整合した高精度な解析を実現した証拠です。
本研究で得られた成果は、「泡が消えない・合体しないシミュレーション」を実現し、大規模な気泡流れを現実的に再現できる解析手法として、原子力、化学工学、宇宙関連など多様な分野での複雑な気液流体の予測に貢献できる点が重要であると考えます。
謝辞
本研究は、日本学術振興会科学研究費基盤研究(C)(JP24K14973)「GPUスパコンを用いた原子力気液二相流解析に適した新たな界面モデルの開発」の支援の下で得られた成果です。
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参考文献
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