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CT原理に基づく炉内出力分布測定技術の完成
−臨界実験による原理実証−


図1 KUCA炉心とステッピングモーター

図1 KUCA炉心とステッピングモーター

検出器は運転ごとにステッピングモーターの位置を変え、炉心周囲のデータを取得します。

図2 炉心4グループの出力と誤差

図2 炉心4グループの出力と誤差

ステッピングモーターが水平にしか動かないことから、高さ方向別の情報が取得できなかったため、4グループのみとなりました。感度の平均化には出力分布を用いますが、参照出力を用いたため、精度が高くなっています。結果として出力と参照出力が重なっています。なお、出力は分布が重要なため、全出力で規格化し無次元としています。精度に関しては、今後の課題です。

 現行の軽水炉では、炉内への直接的な中性子検出器の挿入が可能であり、これにより出力分布測定を行い、炉内の燃料管理を行っています。一方で、炉内が1000 ℃以上になる高温ガス炉では、検出器の炉内への装荷が困難です。
 そこで、黒鉛減速体系で中性子の飛程が長い高温ガス炉の利点を利用し、炉外検出器を移動し、多くの測定点を設け、CT(Computed Tomography)原理を用いて、炉外から漏えい中性子の測定を行い、出力分布を測定することを考案しました。このアイデアの有用性が認められ、2021年度文部科学省原子力システム研究開発事業において「高温ガス炉の出力分布測定のための核計装システムの開発」の提案が採択され、原子力機構、計装回路に詳しい株式会社ANSeeN、検出器素子に詳しい静岡大学の産学官の連携で実用化に向けた開発を行いました。2024年度に開発を完了し、その開発の中で、株式会社ANSeeN、静岡大学の検討の結果、HTTRの出力モニターの検出器を上下させる改良は、技術的な課題がないとの結論に至りました。また、原理の技術実証に関し、京都大学複合原子力科学研究所の臨界集合体実験装置KUCAにおいて出力分布の再現に成功しました(図1、図2)。

謝辞

本研究は、文部科学省原子力システム研究開発事業JPMXD0221459236の助成を受けたものです。


著者(研究者)情報

著者(研究者)氏名 | 深谷 裕司
エネルギー研究開発領域 高温ガス炉プロジェクト推進室 高温ガス炉設計グループ

参考文献

Fukaya, Y. et al., Development of Nuclear Instruments to Measure Power Distribution of HTGR (1) Development of Ex-Core Detector, Proceedings of International Conference on Nuclear Fuel Cycle (GLOBAL2024), Tokyo, Japan, 2024, 4p.

公開日 2025年 3月 31日

 高温ガス炉水素・熱利用研究 

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