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高温ガス炉で製造された水素を利用し鉄をつくる
−製鉄に伴うCO2排出を削減し、カーボンニュートラルに貢献−


図1 高温ガス炉で製造した水素と電力を利用した水素還元製鉄プロセス

図1 高温ガス炉で製造した水素と電力を利用した水素還元製鉄プロセス


 2050年のカーボンニュートラル実現に向け、各種産業からの二酸化炭素(CO2)排出削減が求められています。産業規模が大きく、コークスによる鉄鉱石の還元に伴ってCO2が発生する製鉄業は、主要なCO2排出産業部門の一つになっています。現在、鉄鉱石の還元に水素を利用することでCO2を発生させない新しい製鉄プロセスの研究開発が進められています。
 以上を踏まえて、高温ガス炉の熱及び高温ガス炉で発電した電力を用いて水素を製造し、鉄鉱石の還元に利用する高温ガス炉水素還元製鉄プロセスを提案しました(図1)。本プロセスは高温ガス炉発電による電力を電気炉での直接還元鉄の精錬に利用可能である利点もあります。高温ガス炉での水素製造にカーボンフリー水素製造法を適用することで、完全にCO2フリーの製鉄を行うことが可能となります。本プロセスの熱物質収支をプロセスフロー解析によって導出し、CO2排出量を評価しました。本プロセスのCO2排出は、電気炉の黒鉛電極の消耗に伴うもののみとなります。本プロセスのCO2排出量(7 m3/t-鋼)は、一般の高炉製鉄プロセスの排出量(1,047 m3/t-鋼)の0.7 %にまで削減されました。ここで提案した高温ガス炉水素還元製鉄プロセスを高炉プロセスから置き換えていくことで、将来のカーボンニュートラルの達成に貢献することが期待されます。

著者(研究者)情報

著者(研究者)氏名 | 笠原 清司
高温ガス炉プロジェクト推進室 高温ガス炉安全評価グループ

参考文献

Kasahara, S. et al., Flow Sheet Model Evaluation of Nuclear Hydrogen Steelmaking Processes with VHTR-IS (Very High Temperature Reactor and Iodine-Sulfur Process), ISIJ International, vol.52, no.8, 2012, p.1409–1419.

外部論文: https://doi.org/10.2355/isijinternational.52.1409

Xポスト:#高温ガス炉 の #製鉄 への利用

公開日 2025年 1月 30日

 高温ガス炉水素・熱利用研究 

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