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トピックス
効率的水素製造のカギとなる反応器の基盤技術
−割れやすいセラミックス水素分離膜の簡便なシール方法の提案−
図1 水素製造を行う水素生成反応器の構造と水素分離膜のシール方法
図2 水素製造プラントの起動停止を想定したリーク量の測定結果
高温ガス炉が生み出す高温熱を利用したカーボンフリー水素製造法である熱化学水素製造法IS法の水素製造熱効率は、水素生成反応(ヨウ化水素酸(HI)分解)の反応器に水素分離膜を導入することで向上させることができます*。この際、管状のセラミックス製水素分離膜は、金属製管板にシール材を介して取り付ける必要があります。膨張黒鉛グランドパッキンは、HI分解反応のような高温かつ腐食性環境に耐え、セラミックスが割れないよう圧縮力のみの付与が可能なシール材として知られていました。しかし、締付金具ネジ部に摩擦力が生じるため、リーク量低減に必要な面圧を発生させる圧縮力を、シール材に定量的に与えることは困難でした。
シール材を、それを収める空間に入れて圧縮すると3次元的に変形し、対向面との間に面圧が生じます。この変形量(体積変化)をシール材の密度(既知重量/体積変化)で代表させ、これが圧縮応力と相関することに着目しました。締付金具の回転数により既知重量のシール材の体積を調整し、目的の密度にすることで、シール材に適正な面圧を生じさせ、リーク量を低減させます(図1)。
実用プラントにおける反応器は、起動停止により高温状態と低温状態を繰り返します。このとき、シール材の熱膨張・収縮により面圧は変化するため、シール性能に影響を与えます。そこで、このシール方法について、ステンレス製模擬膜を用いて、熱サイクル試験(試験条件:25〜400 ℃、0.3〜0.9 MPa、試験流体:ヘリウム)を行いました。ヘリウムガスのリーク量は約2×10-5 Pa m3 s-1となり、このリーク量は一般的な発泡漏れ試験の測定限界値に相当し、本シール方法の有効性が確認できました(図2)。
本シール方法は簡便な施工方法で正確な面圧付与が可能であるため、多数の水素分離膜管を取り付ける将来の実用反応器に適応できると考えています。
シール材を、それを収める空間に入れて圧縮すると3次元的に変形し、対向面との間に面圧が生じます。この変形量(体積変化)をシール材の密度(既知重量/体積変化)で代表させ、これが圧縮応力と相関することに着目しました。締付金具の回転数により既知重量のシール材の体積を調整し、目的の密度にすることで、シール材に適正な面圧を生じさせ、リーク量を低減させます(図1)。
実用プラントにおける反応器は、起動停止により高温状態と低温状態を繰り返します。このとき、シール材の熱膨張・収縮により面圧は変化するため、シール性能に影響を与えます。そこで、このシール方法について、ステンレス製模擬膜を用いて、熱サイクル試験(試験条件:25〜400 ℃、0.3〜0.9 MPa、試験流体:ヘリウム)を行いました。ヘリウムガスのリーク量は約2×10-5 Pa m3 s-1となり、このリーク量は一般的な発泡漏れ試験の測定限界値に相当し、本シール方法の有効性が確認できました(図2)。
本シール方法は簡便な施工方法で正確な面圧付与が可能であるため、多数の水素分離膜管を取り付ける将来の実用反応器に適応できると考えています。
*Myagmarjav, O. et al., Development of a Membrane Reactor with a Closed-End Silica Membrane for Nuclear-Heated Hydrogen Production, Progress in Nuclear Energy, vol.137, 2021, p.103772-1–103772-7.
著者(研究者)情報
![]() | 著者(研究者)氏名 | 杉本 千紘 |
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大洗原子力工学研究所 高温工学試験研究炉部 水素・熱利用研究開発グループ |
参考文献
公開日 2025年 3月 10日
高温ガス炉水素・熱利用研究