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地下水の流れが遅い場所を見分ける
−地下水の動きを割れ目の水質で判断する方法を構築−
図1 幌延地域における岩盤中の割れ目に沿った地下水の流れの分布に関する概念図
図2 割れ目水及び間隙水の水素・酸素安定同位体比(δD・δ18O)の関係
高レベル放射性廃棄物の地層処分では、廃棄体から漏出した放射性核種の移行を抑制するため、地下水の流れが緩慢な領域を判別する技術が必要となります。本研究では、ボーリング孔から採取された地下岩盤中の割れ目中の水(割れ目水)とその周囲の間隙水の水素・酸素安定同位体比を比較することにより、割れ目中の地下水の流れが緩慢であるか否かを判別する方法を提示しました。割れ目水と間隙水とで同位体比が異なる場合には、本来地層に含まれる水とは異なる水質の水が割れ目を通じて流れており、同位体比が類似する場合には、割れ目に沿った地下水の流れは緩慢であると考えられます(図1)。幌延地域でこれまでに取得されたデータを用いて検証したところ(図2)、地表付近の浅い領域(孔ごとに異なり、地表から約100〜250 m)では割れ目に沿った地下水の流れが生じており、これよりもやや深い領域(〜約400 m)では流れが緩慢であることが明らかとなりました(図1)。いずれの領域も割れ目の連結性は高く、割れ目を通じて地表から水が浸透しうることが分かっています。したがって、今回の結果から、割れ目の連結性が高い領域であっても地下水の流れが緩慢な領域が存在することが明らかとなりました。
この知見は、地層処分の候補地選定や、処分場内での廃棄体の定置位置決定に役立つと期待されます。
著者(研究者)情報
著者(研究者)氏名 | 望月 陽人 | |
幌延深地層研究センター 堆積岩工学技術開発グループ |
参考文献
公開日 2025年 1月 7日
地層処分技術に関する研究開発