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汚染起源の推定により合理的な放射能濃度の評価が可能に
−蒸動力試験炉(JPDR)の解体によって発生したコンクリート廃棄物に対する評価方法の検討−


図1 (a)放射化学分析によるEu-152/Co-60の組成比の例及び(b)放射化学分析によるNi-63/Co-60の組成比の例

図1 (a)放射化学分析によるEu-152/Co-60の組成比の例及び(b)放射化学分析によるNi-63/Co-60の組成比の例

(a)は放射化学分析の結果からEu-152を検出しているものは構造材の放射化、Eu-152を検出していないものは表面汚染とEu-152/Co-60の計算により推定した放射化計算値と汚染組成比との関連性より分類することができ、Ni-63に対しても汚染起源を判別して合理的に評価することができます(b)。

 原子力機構では、研究施設等から発生する低レベルの放射性廃棄物を将来的に埋設処分する計画です。処分するためには廃棄物中にどのような放射性核種がどのくらいの濃度で存在しているかを調べ、処分場に受け入れ可能な放射能濃度よりも低いことを確認する必要があります。しかし、放射性核種の汚染が構造材の放射化によるものか表面汚染によるものか判別できないと放射化と表面汚染の両者を包含するような過剰に保守的な評価となる可能性があり、汚染起源を判別できることは合理的な評価手法を構築するうえで有効となります。
 そこで、本研究では動力試験炉(JPDR)の解体によって発生したコンクリート廃棄物を対象として、核種ごとに汚染起源、核種の移行挙動、核種組成比の標準偏差を指標として、理論計算法やスケーリングファクタ法、平均放射能濃度法などの複数の評価法の中から、廃棄物の放射能濃度を適切に評価できる組み合わせを検討し、評価法を選択しました。また、外部から測定可能なγ線放出核種Eu-152に着目し、Co-60との組成比の違いを利用して、廃棄物の汚染起源を推定する足掛かりを得ることができました。このことから、複数の評価法を核種ごとに組み合わせて廃棄物の放射能濃度を合理的に評価する方法を構築できる見通しを得ました。

著者(研究者)情報

著者(研究者)氏名 | 青野 竜士
原子力科学研究所 バックエンド技術部 放射性廃棄物管理技術課

参考文献

青野竜士ほか,JPDRから発生した低レベルコンクリート廃棄物に対する放射能濃度評価方法の検討,JAEA-Technology,2024-006,2024,48p.

論文URL: JAEA-Technology-2024-006.pdf

公開日 2025年 3月 31日

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