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インダクタの大幅な小型化
−絶縁体積層薄膜を用いて提案−


図1 本研究で理論提案した絶縁体インダクタの模式図

図1 本研究で理論提案した絶縁体インダクタの模式図

商用利用されている既存のインダクタ(コイル)は、最小でも0.1 mm程度のサイズを占めていました。本研究で理論提案した絶縁体インダクタは、「磁性絶縁体」「トポロジカル絶縁体」2層の積層薄膜を用いることにより、約10,000分の1のサイズでインダクタ機能を実現できると期待されます。

 「インダクタ」は、電子回路で高周波信号を制御するために必須の素子です。電流の変動を打ち消す方向に電圧を誘起する機能を持ち、従来から微小な巻線(コイル)が使われてきました。しかし、この形態のインダクタはどんなに小型でも0.1〜1 mm程度のサイズを占めるため、電子回路の小型化に限界を与える要因となっています。
 本研究では、2種の絶縁体「トポロジカル絶縁体」と「磁性絶縁体」の薄膜の積層により実現されるインダクタ機能を新たに理論提案しました(図1)。トポロジカル絶縁体は内部に電流が流れず、表面だけに電流が流れるため、余計な電流による電力損失を起こしません。一方でその表面では、電流と磁気の間の相互変換が強く働く性質を持ちます。これにより模式図の積層薄膜に交流電流を流すと、磁性体中の磁気の振動を介して逆方向の交流電圧が発生する、インダクタと同等の機能が実現できることを発見しました。従来型(コイル)と同等のインダクタ機能を、絶縁体インダクタでは約10 nm程度、すなわち従来型の約10,000分の1という大幅な薄型で実現できるようになります。
 本研究の成果は、電子回路の小型化と省電力化を両立する、基盤技術の足掛かりとなるものです。これまで信号処理回路中で大きなサイズを占めていたインダクタを、大幅に小型化かつ省電力化することで、情報化社会の進展に大きく貢献することが期待されます。

謝辞

本研究は、JSPS科研費(JP19H05622, JP20H01830, JP21H04643, JP22K03538)及び文部科学省卓越研究員事業の支援を受けて行われました。


著者(研究者)情報

著者(研究者)氏名 | 荒木 康史
先端基礎研究センター スピン−エネルギー科学研究グループ

参考文献

Araki, Y. et al., Emergence of Inductance and Capacitance from Topological Electromagnetism, Journal of the Physical Society of Japan, vol.92, no.7, 2023, 074705, 9p.

外部論文: https://doi.org/10.7566/JPSJ.92.074705

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公開日 2024年 9月 26日

先端原子力科学研究

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