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なぜウラン超伝導体は磁場に強いのか?
−新しい超伝導の機構を解明−


図1 図1 ウラン超伝導体UTe2で高い臨界磁場が実現する機構

図1 ウラン超伝導体UTe2で高い臨界磁場が実現する機構

スピン三重項超伝導体では、物質内部の磁気的揺らぎが、超伝導を生じる電子対(クーパー対)の形成を促します。この磁気的揺らぎは強い磁場がかかるとさらに強まり、それによって電子対の結合がより強固になります。その結果、超伝導は安定化し、強い磁場下でも壊れにくくなるのです。

 超伝導体は通常、磁場に対して非常に脆弱であるため、強い磁場下でも安定して動作する超伝導体の開発は、超伝導線材や量子デバイスの進展において重要な課題となっています。ウランを含む超伝導体であるUTe2(ウランテルル化合物)では、「スピン三重項」と呼ばれる新しいタイプの超伝導が発見されており、さらに強磁場下で超伝導がむしろ強化されるという従来の常識を覆す現象も確認されていました。
 今回の研究では、核磁気共鳴(NMR)法を用いて、この磁場で強化される超伝導がどのように実現されるのか、そのメカニズムを探求しました。実験の結果、強い磁場がかかると物質内部の磁気的揺らぎが増大し、その結果として、超伝導を引き起こす電子対(クーパー対)の結合が強まり、磁場に強い超伝導状態が実現することが明らかになったのです (図1)。
 この発見は、スピン三重項超伝導体においては、磁性と超伝導が深く結び付いていることを示しており、今後、この原理を応用することで、ウランを含まない他の化合物においても磁場に強い超伝導体が開発される可能性が期待されます。このような磁場に強い耐性を持つ超伝導体は、高性能な超伝導線材や量子デバイスの進化にとって極めて重要であり、超伝導技術の応用範囲をさらに広げる可能性を秘めています。

謝辞

本研究は、JSPS科研費(JP20KK0061)の助成を受けたものです。


著者(研究者)情報

著者(研究者)氏名 | 徳永 陽
先端基礎研究センター 強相関アクチノイド科学研究グループ

参考文献

Tokunaga, Y. et al., Longitudinal Spin Fluctuations Driving Field-Reinforced Superconductivity in Ute2, Physical Review Letters, vol.131, issue 22, 2023, 226503, 7p.

外部論文: https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.131.226503

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プレスリリース: ウラン系超伝導体はなぜ磁場に強い?−超伝導を強くする磁気揺らぎの観測に成功−

公開日 2024年 9月 26日

先端原子力科学研究

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