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電子線核分光で原子核の形を調べる


図1 原子核の様々な形状

図1 原子核の様々な形状

(a)球形の原子核、(b)軸が伸びた原子核を表しています。(c)どの角度から見ても変形した原子核を70Seで観測しました。

 原子核は一般に変形した形をしており、球形となる例は少ないです。原子核の形を調べることは、原子核の内部構造を知る手掛かりとなります。これは、原子核の反応や崩壊過程の理解を深め、例えば天体での元素合成の解明にもつながります。原子力エネルギー利用の基礎となっている核分裂も、原子核が極端に変形し、ちぎれる過程です。本研究では、セレン原子核(70Se)の形を観測しました。このため、加速されたイオンビームを使って70Seの回転状態を励起しました。量子力学的には回転エネルギーは離散的となります。回転エネルギーに対応してエネルギー準位がたくさん形成されるが、このエネルギー間隔は、原子核の形状の情報を持ちます。実験では、エネルギー遷移の際に放出されるガンマ線や電子を検出することで回転準位を構築しました。この結果、70Seは図1に示すように、三軸の長さが異なるユニークな形状を示すことが分かりました。
 鉛(208Pb)のように球形な原子核は、三つのどの方向から見ても円形です(図1(a))。レモン型に変形したウラン(238U)では、一つの軸が長く、この軸から見たときだけ円形に見えます(図1(b))。70Seは、どの角度から見ても円形とはなりません(図1(c))。本研究では、独自の電子線分光装置を開発することで、70Seがユニークな形状を持つことを明らかにしました。

謝辞

本研究は、文部科学省の卓越研究員事業(JPMXS0320210193)の支援を受けたものです。


著者(研究者)情報

著者(研究者)氏名 | James Smallcombe
先端基礎研究センター 極限重元素核科学研究グループ

参考文献

Smallcombe, J. et al., Reevaluation of Structures in 70Se from Combined Conversion-Electron and γ-Ray Spectroscopy, Physical Review C, vol.110, issue 2, 2024, 024318, 16p.

外部論文: https://doi.org/10.1103/PhysRevC.110.024318

公開日 2024年 11月 29日

 先端原子力科学研究 

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