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トピックス
熱的な力で物質を分離
−固液界面で温度勾配により駆動される流動の理論的予測−
図1 問題設定の概念図
二つの大きな二成分流体を含む容器を十分に長い毛細管で繋いだ系に臨界点近くの二成分流体(二成分の流体が一様に混ざっています)を封入します。二つの容器の組成と圧力は、臨界点の値に設定し、二つの容器の温度はわずかに異なる温度(TL, TR)に設定します。
図2 細管中の熱的な力の分布
細管の中心軸からの距離(毛細管の半径が1になるよう単位を取っています)の関数としての、毛細血管中の「熱的な力」の密度(単位は理論計算におけるある特徴的な値を取っています)。正(負)の値は、温度勾配と同じ(反対の)向きの「熱的な力」を示します。
毛細管中や多孔膜などの制限された空間の流体に圧力、温度などの場の勾配をかけた際の流動は、物質の分離や微小空間での流体のコントロールの観点から重要です。特に、毛細管中の流体に温度勾配をかけると、毛細管の表面付近で、固液界面での流体の不均一性に起因した「熱的な力」が発生し、毛細管中での流動を誘起します。この現象は、非平衡物理学の基礎的問題であるにもかかわらず、その物理的なメカニズムはよく理解されていません。
私たちは、細管中の相分離(二成分の含まれる割合が異なる二つの状態が共存する)臨界点*近くの二成分流体(身近な例では水と油の混合系)の流動を流体力学の理論を用いて研究し、以下のことを理論的に予測しました。この場合、毛細管の固液界面においては、二成分のどちらかの成分が選択的に吸着されます。この吸着層(図1での毛細管中の黄色で示された層)の厚さは、臨界点の近くで大きくなります。私たちは、図2に示すように、この吸着層の内部で、幅広い二成分流体で、温度を下げた(上げた)時に相分離が起こるかに応じて、温度勾配と同じ(反対の)向きの「熱的な力」が生じることを示しました。この力により二成分流体の温度勾配と同じ(反対の)向きの質量流が誘起されます。
この予測の実験的検証や廃棄物分離への応用は重要な将来の研究課題です。
私たちは、細管中の相分離(二成分の含まれる割合が異なる二つの状態が共存する)臨界点*近くの二成分流体(身近な例では水と油の混合系)の流動を流体力学の理論を用いて研究し、以下のことを理論的に予測しました。この場合、毛細管の固液界面においては、二成分のどちらかの成分が選択的に吸着されます。この吸着層(図1での毛細管中の黄色で示された層)の厚さは、臨界点の近くで大きくなります。私たちは、図2に示すように、この吸着層の内部で、幅広い二成分流体で、温度を下げた(上げた)時に相分離が起こるかに応じて、温度勾配と同じ(反対の)向きの「熱的な力」が生じることを示しました。この力により二成分流体の温度勾配と同じ(反対の)向きの質量流が誘起されます。
この予測の実験的検証や廃棄物分離への応用は重要な将来の研究課題です。
*臨界点…相分離が起こり始める温度と二成分の組成
著者(研究者)情報
![]() | 著者(研究者)氏名 | 藪中 俊介 |
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先端基礎研究センター 先端理論物理研究グループ |
参考文献
公開日 2025年 2月 14日
先端原子力科学研究