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グラフェンと金はどのように電子の手をつなぐか
−グラフェンと金の化学結合の形成条件を解明−
図1 (a)平坦な金表面及び(b)凹凸構造のある金表面に形成したグラフェンと金の間の電子軌道の
角度分解光電子分光によるエネルギー・運動量の関係と(c)化学結合の形成のイメージ図
角度分解光電子分光によって得られた電子軌道の運動量とエネルギーの関係において、(a)平坦な金表面ではグラフェンのπ電子軌道のみが観測されました。(b)同じ運動量とエネルギーの範囲で金の凹凸構造の周期性によって変調された金の6s電子軌道及びグラフェンのπ電子軌道が観測され、それらの交点でエネルギーギャップが生じたことから化学結合が形成したと言えます。(c)イメージ図は金原子と炭素原子の間に「電子の手」である電子軌道によって化学結合が生じたことを示します。
炭素原子の蜂の巣構造から成るグラフェン(単原子厚さの黒鉛)は、その中の電気伝導を担う電子が光速の1/300とも言われるほど極めて速く移動する特性を持つため、次世代以降の半導体材料として注目されています。本研究では配線材料の一つである金の表面にグラフェンを形成し、金の電荷やスピンをグラフェンに注入する効率に影響を与える化学結合の状態を、角度分解光電子分光によって観察しました。
その結果、図1(a)金の最密構造を持つ平坦な表面に形成したグラフェンでは、金の6s電子は結晶全体に三次元的に広がりグラフェンのπ電子の間に化学結合は見いだされませんでした。一方、図1(b)圧延された金箔の表面などに見られる原子サイズの一次元的な凹凸を持つ最密構造では金の6s電子とグラフェンのπ電子の化学結合が見つかりました。このとき、結合に寄与する金の6s電子は一次元の周期性を持ちながら、グラフェンとの界面においては非局在性が高いため、化学結合の形成後もグラフェンのπ電子の特性を損なわないと分かりました。
本研究は、グラフェンと金の接合において金の原子配置の精密な制御によりグラフェンの特性を維持したまま化学結合の形成を実現できることを示しました。この知見は、グラフェンを用いた半導体素子の開発における配線金属の原子配置の制御による高効率の電流・スピン注入についての重要な基礎情報となります。
その結果、図1(a)金の最密構造を持つ平坦な表面に形成したグラフェンでは、金の6s電子は結晶全体に三次元的に広がりグラフェンのπ電子の間に化学結合は見いだされませんでした。一方、図1(b)圧延された金箔の表面などに見られる原子サイズの一次元的な凹凸を持つ最密構造では金の6s電子とグラフェンのπ電子の化学結合が見つかりました。このとき、結合に寄与する金の6s電子は一次元の周期性を持ちながら、グラフェンとの界面においては非局在性が高いため、化学結合の形成後もグラフェンのπ電子の特性を損なわないと分かりました。
本研究は、グラフェンと金の接合において金の原子配置の精密な制御によりグラフェンの特性を維持したまま化学結合の形成を実現できることを示しました。この知見は、グラフェンを用いた半導体素子の開発における配線金属の原子配置の制御による高効率の電流・スピン注入についての重要な基礎情報となります。
謝辞
本研究は名古屋大学、大阪大学との共同研究です。また、本研究はJSPS科研費(JP19K15400)及びコニカミノルタ科学技術振興財団の助成を受けたものです。
著者(研究者)情報
![]() | 著者(研究者)氏名 | 寺澤 知潮 |
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先端基礎研究センター 表面界面科学研究グループ |
参考文献
公開日 2025年 2月 14日
先端原子力科学研究