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トピックス
ナノ結晶の階層化をもたらす力の発見
−先進セラミックスの加工技術に道−
図1 電気二重層による斥力と、二粒子系の枯渇引力のバランスによって高次の配列を安定化させる
セラミックスは耐熱性や耐放射線性に優れ、腐食に強く、化学的に安定であるため、機能材料として産業で用いられます。その中でも、先進セラミックスは高価な金属資源を使うことから、これらの付加価値をさらに高めるためには限られたサイズで機能を集約したコンパクトな構造設計ができるかどうかが課題となっています。
本研究では、排ガス浄化助触媒として製品化されているセリア(CeO2)の製造プロセスを、中性子小角散乱、X線小角散乱及びレーザー共焦点微分干渉顕微鏡等の先進顕微鏡技術を駆使して調べました。その結果、小さなナノ結晶が集まり、階層構造が形成されることを発見しました。この微粒子の分散と凝集は、電気二重層の反発力と拮抗する枯渇引力が生じるために安定化されると説明できます。階層構造を構成する1次粒子と2次粒子が、サイズの異なる粒子として共存することで、高次の配列の相転移を起こすことが明らかになりました。枯渇引力は、大きさの異なる粒子が混ざっている場合に、同種の大きさ同士が集まりやすくなる力で、この力を有機高分子が含まれないセラミックス製造プロセスにおいて明らかにした初のケースです(図1)。
本成果は、微粒子が規則配列するときの結合様式を制御する集積ナノテクノロジーとして、新しい触媒やより緻密な設計が求められる光学材料の製造技術の進歩に寄与することが期待されます。
本研究では、排ガス浄化助触媒として製品化されているセリア(CeO2)の製造プロセスを、中性子小角散乱、X線小角散乱及びレーザー共焦点微分干渉顕微鏡等の先進顕微鏡技術を駆使して調べました。その結果、小さなナノ結晶が集まり、階層構造が形成されることを発見しました。この微粒子の分散と凝集は、電気二重層の反発力と拮抗する枯渇引力が生じるために安定化されると説明できます。階層構造を構成する1次粒子と2次粒子が、サイズの異なる粒子として共存することで、高次の配列の相転移を起こすことが明らかになりました。枯渇引力は、大きさの異なる粒子が混ざっている場合に、同種の大きさ同士が集まりやすくなる力で、この力を有機高分子が含まれないセラミックス製造プロセスにおいて明らかにした初のケースです(図1)。
本成果は、微粒子が規則配列するときの結合様式を制御する集積ナノテクノロジーとして、新しい触媒やより緻密な設計が求められる光学材料の製造技術の進歩に寄与することが期待されます。
謝辞
本研究は、東京大学、山形大学、北海道大学、量子科学技術研究開発機構との協力の下、黎明研究(2021-22)、萌芽研究開発制度(2023-24)、JSPS科研費(JP20K05387, JP23K17808)、MEXT科研費(JP18KK0148, JP18H01921, JP22H02010)、JRR-3 SANS-J (C3-2)プロジェクト課題(2021-D400, 2022-D586, 2023-D857)を用いて行われました。
著者(研究者)情報
![]() | 著者(研究者)氏名 | 青柳 登 |
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先端基礎研究センター 耐環境性機能材料科学研究グループ |
参考文献
Communications Chemistryの注目論文: 2024 Editors' Highlights, Communications Chemistry, vol.8, issue 1, 2025, 2p.
公開日 2025年 3月 31日
先端原子力科学研究