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詳細数値シミュレーションと理論で壁面衝突噴流の微粒化機構に迫る


図1 壁面衝突噴流の挙動

図1 壁面衝突噴流の挙動

溶融燃料を模擬したグリセリン水溶液と水を模擬したシリコンオイルを用いた、壁面衝突噴流の微粒化と広がり挙動を示しています。

 微粒化は、過酷事故時の溶融燃料の冷却や、BWRの定常運転時の環状噴霧流における沸騰遷移など、原子力分野における様々な状況に関わります。ここでは、数値シミュレーションを用いた浅いプールにおける壁衝突噴流の微粒化に関する研究*1を紹介します。過酷事故において溶融燃料は、浅い水プールに侵入し、微粒化しながら床に衝突して三次元的に広がる場合があります。しかし、溶融燃料の微粒化を直接かつ詳細に調査することは困難であるため、溶融燃料を模擬した流体を用いてその微粒化を次のように調査しました。

(1)JAEAが開発する詳細二相流解析コードTPFIT*2を用いた詳細数値シミュレーション
(2)実験結果*3との比較による数値結果の全体的な挙動の検証
(3)噴霧化の要素挙動としての液滴形成の調査
(4)液滴形成の理論式の開発
(5)理論式を用いた推定値との比較

 (1)に関わる数値シミュレーション結果を図1に示します。実験と同様の微粒化や広がりが数値シミュレーションでも再現できることを確認できました。次に、液滴形成に着目して調査を行い、液滴形成に関する界面不安定性や力学的釣り合い式を理論的に導き出し、その推定値と数値シミュレーション結果が一致することを確認しました。これらの結果から壁面衝突噴流の微粒化機構を明らかにすることができました。
 本研究が噴流の微粒化の基礎的理解を深め、原子力分野における他の状況にも役立つことが期待されます。

*1 N. Horiguchi, et al., Phys. Fluids. 35, 073309 (2023).
*2 H. Yoshida, et al., Trans. At. Energy Soc. Japan. 3 (3) (2004).
*3 S. Yamamura, et al., Phys. Fluids. 34, 082110 (2022).


謝辞

本研究成果は、日本原子力研究開発機構のスーパーコンピュータ「HPE SGI8600」を利用して得られたものです。


著者(研究者)情報

著者(研究者)氏名 | 堀口 直樹
原子力基礎工学研究センター 炉物理・熱流動研究グループ

参考文献

Horiguchi, N. et al., Atomization Mechanisms of a Wall-Impinging Jet in a Shallow, Physics of Fluids, vol.35, issue 7, 073309, 2023, 17p.

外部論文: https://doi.org/10.1063/5.0157032

公開日 2025年 3月 31日

 原子力基礎工学研究 

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