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使用済核燃料再処理プロセスでのステンレス鋼の腐食を評価
−高レベル廃液濃縮缶内面の腐食評価手法を構築−


図1 使用済核燃料再処理工程の高レベル廃液濃縮缶内面のステンレス鋼腐食の様子を再現した結果

図1 使用済核燃料再処理工程の高レベル廃液濃縮缶内面のステンレス鋼腐食の様子を再現した結果


 使用済核燃料再処理工程では、硝酸水溶液に溶解した使用済燃料由来の金属イオンが酸化剤として作用し、ステンレス鋼製部材が粒界腐食を起こすことが知られています。機器の高経年化対策や安定運転のためには、機器材料の腐食状態を把握し、寿命が正しく評価されている必要があります。しかし、運転開始後は高い放射線により腐食状態を実際に観察することが困難であるため、再処理工程の複雑な過程を考慮した精度の高い腐食量予測手法が必要となります。
 この研究では、最も腐食が厳しいと予想される高レベル廃液濃縮缶の内面腐食を模擬した実験を行い、酸化剤濃度や沸騰などがステンレス鋼の腐食に及ぼす影響を電気化学的に明らかにしました。そして、実際の濃縮缶運転状況を反映した腐食評価手法を構築し、腐食状態を再現しました(図1(a) (b))。溶液の濃縮による硝酸濃度の増加、減圧沸騰、金属イオンのうちルテニウム、バナジウム、セリウムなどが腐食反応速度を増大させる要因となるため、濃縮運転中にはこれらの要素を監視する必要があることを提案しています。


謝辞

本研究の一部は、原子力規制委員会原子力規制庁からの受託事業「平成28年度原子力施設等防災対策等委託費(商用再処理施設の経年変化に関する研究)」によって行われました。


著者(研究者)情報

著者(研究者)氏名 | 入澤 恵理子
原子力基礎工学研究センター 防食材料技術開発グループ

参考文献

Irisawa, E. et al., Estimating the corrosion rate of stainless steel R-SUS304ULC in nitric acid media under concentrating operation, Journal of Nuclear Materials, vol. 591, 154914, 2024, 10p.

外部論文: https://doi.org/10.1016/j.jnucmat.2024.154914

公開日 2025年 1月 30日

 原子力基礎工学研究 

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