トピックス
炉心の過熱を遅らせて過酷事故への進展を防ぐ
−新燃料被覆管材料の高温耐酸化性−
図1 CrコーテッドZry被覆管の微細組織変化
(a) 1200 ℃でコーティングが保持されますが、(b) 1300 ℃ではコーティングは喪失します。
Crコーテッドジルカロイ合金(Zry)被覆管は, Zry被覆管と比較して耐酸化性に優れているため,事故耐性燃料の被覆管候補として広く知られています。これらの材料を軽水炉の新しい被覆管材料として利用するためには、過酷事故時の評価が必要です。日本の規制基準では、Zry被覆管の温度は1200 ℃を超えないこと、これは冷却材喪失事故(LOCA)の模擬試験と酸化試験の結果から決定されます。
LOCA時の条件を再現するためには、Crコーテッドの高温水蒸気による酸化試験の必要があります。しかし、設計基準を超える過酷事故現象においては、1200 ℃以上でのCrコーテッドの酸化挙動に関して多くの未解明の課題が残されています。本研究では、1200 ℃以上の高温水蒸気酸化下におけるCrコーテッドのメカニズムと現象を調べ、「コーティング保持」から 「コーティング喪失」への遷移を実験的に決定しました。
酸化試験後の断面微細組織を図1(a, b)に示します。1300 ℃では, 外表面領域にZrO2層が生成した場合は、Crコーティング内に析出したZrを通じてOが拡散するため、コーティングは保護膜では無くなります。試験の結果、Crコーティングは1300 ℃ではZrを保護できないが、1200 ℃でZryを酸化から保護できることが示されました。
本研究は、Crコーテッドが高温水蒸気に曝された場合のメカニズムや現象を明らかにし、過酷事故を模擬した大規模試験データの理解に役立つものです。
LOCA時の条件を再現するためには、Crコーテッドの高温水蒸気による酸化試験の必要があります。しかし、設計基準を超える過酷事故現象においては、1200 ℃以上でのCrコーテッドの酸化挙動に関して多くの未解明の課題が残されています。本研究では、1200 ℃以上の高温水蒸気酸化下におけるCrコーテッドのメカニズムと現象を調べ、「コーティング保持」から 「コーティング喪失」への遷移を実験的に決定しました。
酸化試験後の断面微細組織を図1(a, b)に示します。1300 ℃では, 外表面領域にZrO2層が生成した場合は、Crコーティング内に析出したZrを通じてOが拡散するため、コーティングは保護膜では無くなります。試験の結果、Crコーティングは1300 ℃ではZrを保護できないが、1200 ℃でZryを酸化から保護できることが示されました。
本研究は、Crコーテッドが高温水蒸気に曝された場合のメカニズムや現象を明らかにし、過酷事故を模擬した大規模試験データの理解に役立つものです。
謝辞
本研究は、三菱重工業株式会社との共同研究「Crコーティング被覆管の通常時及び事故時挙動に関する研究」の成果の一部です。
著者(研究者)情報
著者(研究者)氏名 | Afiqa Mohamad | |
原子力基礎工学研究センター 燃料高温科学研究グループ |
参考文献
公開日 2024年 10月 7日
原子力基礎工学研究