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地上の半導体ソフトエラー率を迅速に推定する手法の開発化
−安心安全な超スマート社会の実現のために−


図1 (a)地上環境のソフトエラー率の見積もり手順、及び(b)様々な測定値を用いた地上環境のソフトエラー率の見積もり結果

図1 (a)地上環境のソフトエラー率の見積もり手順、及び(b)様々な測定値を用いた地上環境のソフトエラー率の見積もり結果


 放射線が引き起こす半導体チップの保持情報の反転現象(シングルイベントアップセット; SEU)は、電子機器の一時的な誤動作(ソフトエラー)の一因です。地上環境では宇宙から降り注ぐ中性子がSEUの主因であり、中性子は遮蔽が困難なため、特に高い信頼性が必要な機器では地上のソフトエラー率(SERGND, 単位時間あたりのソフトエラー数)の評価が不可欠です。SERGND評価には、地上に到達する中性子を再現可能な中性子源を利用することが一般的ですが、このような中性子源は世界的に見ても数が少なく、高まるSERGND評価の需要を満たすには不十分な状況にあります。そこで、任意の中性子源をSERGND評価に利用する手法を開発しました。本手法では、半導体チップのソフトエラー発生確率(σ, 中性子1個が半導体チップに入射したときにソフトエラーが発生する確率)の、中性子エネルギーEnとソフトエラー発生に必要なノイズ電荷量Qfitに対する依存性σ(En, Qfit)をシミュレーションで求め(図1(a)-1)、任意の中性子源で測定したソフトエラー率とシミュレーション値を比較してQfitを求めます(図1(a)-3)。Qfitが定まると、σ(En)と地上の中性子エネルギー分布φ(En)よりSERGNDを求めることができます(図1(a)-4)。
 本手法により、特殊な中性子源以外にも、国内外に数多くある中性子源でSERGND評価が可能となり(図1(b))、高まる半導体ソフトエラー評価の需要に応えることができます。これにより、安心安全な超スマート社会の実現のために必要となる高信頼な半導体チップの設計やそれを用いた情報システムの高信頼化に貢献します。

謝辞

本研究成果の一部は、株式会社ソシオネクストとの共同研究「新型トランジスタにおけるソフトエラーシミユレーション技術の開発」およびJST産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)(課題番号JPMJOP1721)「安全・安心・スマートな長寿社会実現のための高度な量子アプリケーション技術の創出」の支援を受けて実施したものです。


著者(研究者)情報

著者(研究者)氏名 | 安部 晋一郎
原子力基礎工学研究センター 放射線挙動解析研究グループ

参考文献

Abe, S. et al., A Terrestrial SER Estimation Methodology Based on Simulation Coupled With One-Time Neutron Irradiation Testing, IEEE Transactions on Nuclear Science, vol.70, issue 8, part 1, 2023, p.1652-1657.

外部論文: https://doi.org/10.1109/TNS.2023.3280190

プレスリリース: 電子機器の信頼性評価の迅速化に光明〜様々な中性子施設で半導体ソフトエラー評価を可能にする技術を開発〜

公開日 2024年 11月 20日

 原子力基礎工学研究 

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