トピックス
環境中の微量ウランの分布状態を超伝導技術で可視化できる分析法
−環境中のさまざまな微量元素の移行挙動解明への期待−
図1 従来の検出器(SDD)と本研究の検出器(TES)による黒雲母試料中のUの分析結果の比較
原子力発電用燃料として用いられるウラン(U)の環境中での移行挙動の把握は、放射性廃棄物の埋設処分時の安全性評価において重要です。Uの移行挙動を知るためには、環境試料に含まれる微量のUの化学状態や分布状態を調べる必要があり、試料の微小領域にX線を照射して試料中の元素から発生する蛍光X線を分析する手法が用いられてきました。しかし、従来の検出器を用いる分析法では、地殻中に多量に含まれる他の元素(ルビジウム(Rb)など)が測定の妨害となり、微量のUに由来する蛍光X線だけを区別して分析することが困難という課題がありました。
そこで本研究では、超伝導転移端検出器(TES)と呼ばれる、X線を高いエネルギー分解能で測定できる新型検出器を導入した新たな分析法を開発しました。複数の大学と研究機関が協力して、マイクロメートルサイズのX線を用いた分析に世界で初めてTESを適用しました。実際の環境試料である黒雲母をTESにより分析し、従来の半導体検出器(SDD)ではRbの蛍光X線に埋もれてしまい見えなかった、微弱なUの蛍光X線を検出することに成功しました(図1)。さらに、SDDではRbの影響を受けてRbと似通っていたUの分布が、Rbと異なる分布をしていることが明らかになり、黒雲母中の正確なUの分布を調べることができました。
本研究で開発した手法は、U以外の元素にも適用できます。この手法で試料中の濃度が百万分の一レベルの超微量元素に対し、マイクロメートルサイズの分布を明らかにできれば、さまざまな元素の移行挙動のメカニズムを原子・分子スケールで解き明かすことができると期待しています。
そこで本研究では、超伝導転移端検出器(TES)と呼ばれる、X線を高いエネルギー分解能で測定できる新型検出器を導入した新たな分析法を開発しました。複数の大学と研究機関が協力して、マイクロメートルサイズのX線を用いた分析に世界で初めてTESを適用しました。実際の環境試料である黒雲母をTESにより分析し、従来の半導体検出器(SDD)ではRbの蛍光X線に埋もれてしまい見えなかった、微弱なUの蛍光X線を検出することに成功しました(図1)。さらに、SDDではRbの影響を受けてRbと似通っていたUの分布が、Rbと異なる分布をしていることが明らかになり、黒雲母中の正確なUの分布を調べることができました。
本研究で開発した手法は、U以外の元素にも適用できます。この手法で試料中の濃度が百万分の一レベルの超微量元素に対し、マイクロメートルサイズの分布を明らかにできれば、さまざまな元素の移行挙動のメカニズムを原子・分子スケールで解き明かすことができると期待しています。
謝辞
本研究はMEXT科研費(JP18H05458, JP21H00162)、及びJSPS科研費(JP19H01145, JP19H01960, JP19K15606, JP19K21893, JP19K23432, JP20K20527, JP20K15238, JP20K14524, JP21H03585, JP21H05443, JP21K18649, JP21K18917, JP22F21313, JP22H00166, JP22K18277)の助成を受けたものです。また、JASRI/SPring-8の研究課題(2022A0174, 2022A0180, 2021A1610, 2019A1523, 2019B1498, 2020A0174)、高エネルギー加速器研究機構(KEK)フォトンファクトリーの研究課題(2022G126, 2020G670, 2020G081, 2018S1-001)に支援頂きました。
著者(研究者)情報
著者(研究者)氏名 | 蓬田 匠 | |
原子力基礎工学研究センター 原子力化学研究グループ |
参考文献
公開日 2024年 9月 26日
原子力基礎工学研究