トピックス
液体ヘリウム不要の中性子散乱用特殊試料環境の構築
−安全手軽にロスを減らして低温・強磁場環境を実現−
図1 新しい中性子散乱用ヘリウムフリーマグネット(a)及び3台のトップロード冷凍機(b)〜(d)
量子ビームの一つである中性子は、ごく限られた施設でのみ利用可能で、二つの中性子施設J-PARC MLFとJRR-3を併せ持つ機構は世界でも希有な存在です。中性子は、高い透過性に加えて磁性に高い感度を有することから、次世代磁性材料の研究に活用されています。これらの研究では、絶対零度に近い低温や、地磁気の数十万倍の強磁場など、極限環境での測定が多く必要とされます。これを実現する冷凍機やマグネットなどの試料環境機器は、従来、液体ヘリウムを必要としましたが、ヘリウムは近年価格高騰やその供給に問題を抱えています。また取扱いに知識・経験が必要とされる上、実験中は測定を中断して定期的に補充する必要があるなど、多くのロスがありました。
そこで東日本大震災以降停止していた研究炉JRR-3の運転再開に向けて、液体ヘリウムを必要としないマグネット、冷凍機システムの開発・導入を進め、マグネットは無冷媒型として最大の10 T、合わせて1.5 Kの低温環境を安定して実現することに成功しました(図1(a))。また同じ試料周りのデザインを持つ3台の冷凍機、さらなる低温を可能にする3Heインサートを合わせて導入することで、10 T, 0.3 Kという極限環境での実験が安全・手軽にそしてロスなく安定して実現できるようになりました(図1(b)〜(d))。現在、再稼働したJRR-3での一つの強みとして活躍しています。
そこで東日本大震災以降停止していた研究炉JRR-3の運転再開に向けて、液体ヘリウムを必要としないマグネット、冷凍機システムの開発・導入を進め、マグネットは無冷媒型として最大の10 T、合わせて1.5 Kの低温環境を安定して実現することに成功しました(図1(a))。また同じ試料周りのデザインを持つ3台の冷凍機、さらなる低温を可能にする3Heインサートを合わせて導入することで、10 T, 0.3 Kという極限環境での実験が安全・手軽にそしてロスなく安定して実現できるようになりました(図1(b)〜(d))。現在、再稼働したJRR-3での一つの強みとして活躍しています。
謝辞
本研究は、製作メーカー及びThe International Society for Sample Environmentを通じた海外施設との密接な連携により行われました。
著者(研究者)情報
著者(研究者)氏名 | 金子 耕士 | |
物質科学研究センター 強相関材料物性研究グループ |
参考文献
公開日 2024年 10月 25日
中性子及び放射光利用研究