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放射光X線が導く水素安全対策の高度化
−一酸化炭素に被毒されない水素再結合触媒の開発−
図1 (a)従来触媒(Pt/Al2O3)と(b)新規触媒(Pt-Fe/CeZrYOx)における一酸化炭素存在下での水素再結合反応様式
原子炉の内部は水の放射線分解などにより常に水素ガスが発生する環境にあり、爆発事故を防ぐためにも水素ガスの低減化が必要です。触媒反応により水素ガスを減らすことができる水素再結合触媒は、停電時でも動作可能なことから、有望な水素低減化機構と考えられています。一方、シビアアクシデント時には、高温環境下にさらされることで一酸化炭素の発生が想定され、一酸化炭素は触媒の性能を無効化してしまう被毒効果を持つことから、性能劣化が起きない新たな水素再結合触媒の開発が望まれています。
本研究では従来触媒(Pt/Al2O3)に対して、サポート材として酸素吸蔵放出能力を持つセリア−ジルコニア−イットリア複合酸化物を使用し、金属微粒子として電子状態変化が想定される白金と鉄の合金微粒子を採用した新規触媒(Pt-Fe/CeZrYOx)を開発しました。この触媒は一酸化炭素存在下においても良好な触媒性能を示しました。その反応機構を解明するために、大型放射光施設(SPring-8)からの放射光X線を利用した局所構造評価を行いました。その結果、従来触媒では白金微粒子表面に一酸化炭素が吸着することで反応が阻害されるのに対し(図1(a))、新規触媒では表面に水素原子が吸着し、この水素原子が起点となり水素再結合反応が進行することが分かりました(図1(b))。
本研究の成果により高性能触媒の開発が促進され、安全な原子炉の運転につながることが期待されます。
著者(研究者)情報
![]() | 著者(研究者)氏名 | 松村 大樹 |
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物質科学研究センター 研究推進室 |
参考文献
公開日 2025年 1月 30日
中性子及び放射光利用研究