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ガラスの複雑な原子構造を高速・高精度な原子シミュレーションで再現
図1 機械学習分子動力学法によるシリカガラス構造シミュレーションの概略図
シリカガラスは、その高い透明度と化学的安定性から、窓ガラスや光ファイバー、半導体製造において重要な材料です。一般的に、ガラスは原子が不規則に配置されていると考えられていますが、シリカガラスのX線や中性子線回折実験では鋭いピークが観察されることから、ある程度の規則的な原子配列(中距離秩序構造)が存在すると考えられています。この中距離秩序構造はシリカガラスの透明度などと関連しており、その詳細を解明することは、機能性ガラス材料の開発において重要です。実験的にガラスの原子配列を特定することは困難であるため、ガラスの中距離秩序構造を解明するには高精度なシミュレーションによる構造解析が必要です。私たちは、量子力学計算の結果を機械学習によって学習させることで、高速かつ高精度な計算を可能にする「機械学習分子動力学法」を活用し、シリカガラスの回折ピークを再現することに成功しました。さらに、ガラス内部の規則的な原子配列を明らかにするには、原子の繋がりやその形状を明らかにすることが重要となります。私たちは、パーシステントホモロジー等の数学的手法を用いることにより、不規則なガラス構造内に潜む中距離秩序構造の詳細を特徴づけることを可能としました。
高精度シミュレーションにより、実験のみでは特定が難しいガラスの立体的な原子配列を解析、解明することで、機能性ガラス材料の開発が加速することが期待されます。
謝辞
本研究の一部は、データ活用社会創成プラットフォーム mdx (jh230069)「統合機械学習分子動力学システムの構築」を利用して得られたものです。また、JSPS科研費費(基盤研究(C)(JP23K04637)「核燃料物質に特化した機械学習分子動力学法の開発」の助成を受けて行われました。
著者(研究者)情報
著者(研究者)氏名 | 小林 恵太 | |
システム計算科学センター AI・DX基盤技術開発室 |
参考文献
公開日 2025年 1月 7日
システム計算科学研究