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土の中で金属イオンはどう動く?
−分子スケールのシミュレーションと実験が解き明かす土の性質−
図1 土の中の金属イオンの動きを理解・予測するために重要な、分子スケールシミュレーションの概要図
「土の中でイオンがどう動くのか?」という問いは、放射性廃棄物の埋設処理をはじめとする多くの分野で重要です。そして土の中に存在する様々な鉱物の中で特に鍵を握っているのが、多くのイオンを吸着する粘土鉱物です。
これまで、粘土鉱物へのイオンの吸着については、イオンごとに個別に研究され、系統的な理解が不足していました。そこで本研究では、分子レベルの実験とスーパーコンピューターによるシミュレーションを組み合わせて様々なイオンの吸着挙動を分子レベルで解析し、「水への溶けにくさ」と「イオン半径」の二つの因子に着目することで、吸着挙動を系統的に理解できることを明らかにしました。この発見に従い、イオン半径の大きなラジウムが粘土鉱物に強く吸着することを予測し、さらに天然の土壌試料を分析することでこの予測が裏付けられました。このことは、今回の発見が実際の天然環境の理解に適用できることを示しています。
今回の発見は、粘土鉱物への吸着反応に広く応用できる知見です。そのため、土の中の放射性核種の挙動の理解だけでなく、土の中のイオンの動きや粘土鉱物が重要とされる他分野、例えば資源や農業、惑星の環境理解にも役立つと期待されます。
謝辞
本研究は、JSPS科研費(JP19K23432, JP21H02090, JP21K18917, JP23K17034)の助成を受けて行われました。また、東京大学及び大阪大学との共同研究「放射性元素の環境中動態に関する研究」として実施されました。
著者(研究者)情報
著者(研究者)氏名 | 山口 瑛子 | |
システム計算科学センター AI・DX基盤技術開発室 |
参考文献
公開日 2024年 11月 29日
システム計算科学研究