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γ線照射下のジオポリマーからの水素の発生と放出をモデル化
−ジオポリマーによる放射性廃棄物の固定化の有効性を確認−


図1(a)ジオポリマーからの水素(H<sub>2</sub>)ガス発生の実験結果と(b)スケールの影響の予測モデル

図1 (a)ジオポリマーからの水素(H2)ガス発生の実験結果と(b)スケールの影響の予測モデル

(a)標準製造()と高pH製造(●)の2 Lジオポリマー試料です。線量当たりのH2発生量が時間とともに一定になりますが、高pHではH2の再結合(水に戻る反応)が顕著になるため、高pH調製時の発生量が全体的に小さくなりました。 (b)ジオポリマーを円筒のドラム缶に入れた場合を想定してモデルを作りました。ドラム缶が高くなるほど、H2発生量が小さくなりますが、製造時のpH等によって同一高さで幅を持った曲線になります。

 原子力発電等で発生する放射性廃棄物を無機の固化体中に固定化することは、放射性物質の環境への拡散防止だけでなく、廃棄物の安全な取扱いにおいても重要です。廃棄物には一般に水が含まれており、これが放射性物質からの放射線によって分解され、水素(H2)ガスが発生するため、固化体中の廃棄物量が制限されます。そこで、H2ガス発生に起因する加圧や燃焼のリスクを評価するため、実際のH2ガスの発生量を調べる必要があります。一方、廃棄物の固定化にアルミノケイ酸塩の一つであるジオポリマーを使用すると、常温で固定化できるため、経済的で、処理中の放射性物質の飛散も高温処理より抑えられる利点があります。
 本研究では、ガンマ線照射下のジオポリマーからのH2発生量に及ぼす固化体スケールの影響を調べ、これをモデル化しました。実験は、共同研究先のフランス原子力庁(CEA)の照射装置を用いて行いました。
 図1(a)はH2発生量の実験結果(サイズ2 L、高さ22 cm)で、固化体中のH2の再結合(水に戻る反応)と拡散によって時間とともに一定になります。特にpHが高いと、再結合が効率的になります。この結果を実験室の規模から実際の現場の規模に拡張して、図1(b)の廃棄物を封入するドラム缶の高さ(高さと直径の比は一定)に対するH2発生量の予測モデルを作りました。想定される実規模サイズ(200 L)では、H2の移行経路が長くなり再結合の機会が増えます。その結果、H2発生量が著しく小さくなるため、廃棄物の固定化でのジオポリマーの有用性が確認されました。

謝辞

実験は、共同研究先のフランス原子力庁(CEA)の照射装置を用いて行いました。


著者(研究者)情報

著者(研究者)氏名 | Vincent Cantarel
福島廃炉安全工学研究所 廃炉環境国際共同研究センター
デブリ・廃棄物マネジメントグループ

参考文献

Cantarel, V. et al., Diffusion Controlled Hydrolysis in Geopolymers Under Gamma Irradiation, Journal of Nuclear Materials, vol.592, 2024, 154969, 9p.

外部論文: https://doi.org/10.1016/j.jnucmat.2024.154969

公開日 2025年 3月 31日

 福島第一原子力発電所事故の対処に係る研究開発(廃止措置に向けた研究開発) 

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