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トピックス
中性子を計測せずに中性子数の増加を評価する
−短半減期希ガス核分裂生成物の放射能比に基づく臨界監視法−
図1 88Krと135Xeの放射能比を用いた中性子増倍率(keff )推定法
図2 キャニスタ内の様々な種類の燃料デブリに対する88Kr/135Xe放射能比と中性子増倍率keff の相関
図3 原子炉格納容器(PCV)内の様々な種類の燃料デブリに対する88Kr/135Xe放射能比と
中性子増倍率keff の相関(▲と▼)(参考のため、図2のキャニスタでの相関 (■) を挿入)
図1は、半減期の短い核分裂生成物88Krと135Xeの放射能測定によって、原子炉格納容器(PCV)や燃料デブリ貯蔵キャニスタ内の中性子増倍率(keff)を推定する応用方法のイメージです。この方法では、燃料デブリ貯蔵キャニスタ(図1上)やPCV(図1下)の様々な場所からガスを採取します。88Krや135Xeのような希ガスから放出されるガンマ線測定の利点は、ガンマ線のバックグラウンドが比較的低い場所で測定ができることです。また、事前に求めた88Kr/135Xeの放射能比とkeff の関係(図2、図3)から、ガス採取点での臨界性を評価します。
これまでに開発した未臨界燃焼計算コードを、燃料デブリ貯蔵キャニスタ及びPCVの廃止措置プロセスにおける様々な燃料デブリ条件に適用しました。燃料デブリ貯蔵キャニスタをモデル化し、様々な燃料デブリ組成に対するkeff と88Kr/135Xeの放射能比 (A(88Kr/135Xe)) の相関を調べました。また、PCVをモデル化し、様々な形状におけるkeff -A(88Kr/135Xe)相関を調べました。
その結果、燃料デブリ貯蔵キャニスタの臨界性と A(88Kr/135Xe)の相関は線形であり、keff -A(88Kr/135Xe)の相関は燃料デブリ貯蔵キャニスタやPCVのような形状にほぼ影響されないことが分かりました。これらの結果は、ガンマ線のバックグラウンドが比較的低い場所で測定できる放射能比 A(88Kr/135Xe)が臨界性のモニタリングに使用できることを示しています。
著者(研究者)情報
![]() | 著者(研究者)氏名 | Eka Sapta Riyana |
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福島廃炉安全工学研究所 廃炉環境国際共同研究センター デブリ探査グループ |
参考文献
公開日 2025年 3月 10日
福島第一原子力発電所事故の対処に係る研究開発(廃止措置に向けた研究開発)