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トピックス
ため池における放射性セシウム分布の現場評価を目指して
−底質中放射性セシウムの深度分布の経時変化による影響−
図1 プラスチックシンチレーションファイバー(PSF)のため池水底での測定状況
図2 ため池で採取した全底質の90 %深度(底質中放射性セシウムの総量の90 %が含まれる表層からの深度)の分布割合
図3 PSFで得られた計数率とその測定地点で採取された底質中(0〜15 cm)の平均放射性セシウム濃度の比較例
近似式の傾きが換算係数を表しています。両者に強い相関が見られました。両者の相関性が強いほど近似式の決定係数が大きくなり、図4の縦軸の決定係数が大きくなります。
図4 着目する深度と図3に示した近似式の決定係数との関係
PSFで得られた計数率と各深度の底質中平均放射性セシウム濃度の関係の決定係数を示しています。
福島県の農業用ため池の水底における放射性セシウム(134Cs及び137Cs)のモニタリングは、灌漑用水の安全性を確保し、農業活動の再開を支援するために重要です。先行研究で、現場で底質中放射性セシウム濃度を迅速かつ簡便に推定するために、プラスチックシンチレーションファイバー(PSF)の測定技術を開発しました。
ため池水底にPSFを静置(図1)することで得られたγ線計数率を濃度に換算するための係数が必要で、放射性セシウムが主に底質の表層から10 cmに分布していると仮定して設定されていました。しかし、底質中の放射性セシウムの深度分布は、時間の経過とともに変化する可能性が示唆されています。
本研究では、放射性セシウムの深度分布の変化を考慮した濃度評価の必要性を検討しました。2015〜2019年に行われた底質を採取の結果、放射性セシウムの総量の90 %が含まれる深度は、表層から10 cmに分布するケースが時間の経過とともに減少し、表層から15及び20 cmに分布するケースが増加していました(図2)。2015年以降、底質の表層から15あるいは20 cmを考慮した場合、PSFの計数率と底質中放射性セシウム濃度との間に強い相関性が観測され(図3)、これは図2の傾向と一致しました。しかし、表層から10 cmだけを考慮した場合でも、十分な精度が保てる決定係数が得られました(図4)。事故後5年以降は、放射性セシウムの深度分布の変化を考慮した換算係数を用いることで、より推定精度の向上が期待できます。
ため池水底にPSFを静置(図1)することで得られたγ線計数率を濃度に換算するための係数が必要で、放射性セシウムが主に底質の表層から10 cmに分布していると仮定して設定されていました。しかし、底質中の放射性セシウムの深度分布は、時間の経過とともに変化する可能性が示唆されています。
本研究では、放射性セシウムの深度分布の変化を考慮した濃度評価の必要性を検討しました。2015〜2019年に行われた底質を採取の結果、放射性セシウムの総量の90 %が含まれる深度は、表層から10 cmに分布するケースが時間の経過とともに減少し、表層から15及び20 cmに分布するケースが増加していました(図2)。2015年以降、底質の表層から15あるいは20 cmを考慮した場合、PSFの計数率と底質中放射性セシウム濃度との間に強い相関性が観測され(図3)、これは図2の傾向と一致しました。しかし、表層から10 cmだけを考慮した場合でも、十分な精度が保てる決定係数が得られました(図4)。事故後5年以降は、放射性セシウムの深度分布の変化を考慮した換算係数を用いることで、より推定精度の向上が期待できます。
謝辞
本研究は、福島県土地改良事業団体連合会からの受託研究「水底の放射線分布測定手法に関する技術指導」の成果の一部です。
著者(研究者)情報
![]() | 著者(研究者)氏名 | 越智 康太郎 |
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福島廃炉安全工学研究所 廃炉環境国際共同研究センター 環境モニタリンググループ |
参考文献
公開日 2025年 3月 31日
福島第一原子力発電所事故の対処に係る研究開発(環境回復に係る研究開発)