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除染や家屋解体作業における被ばく線量評価向上を目指して
−作業別・場所別に作業員の被ばく線量を統計的に評価−


図1 データの取得と予測精度の指標

図1 データの取得と予測精度の指標

図2 対象作業における作業員別の積算被ばく線量

図2 対象作業における作業員別の積算被ばく線量

図3 作業全体における計画値の精度の分布

図3 作業全体における計画値の精度の分布

図4 作業種別の計画値の精度の指標と計画値の過小評価となる割合

図4 作業種別の計画値の精度の指標と計画値の過小評価となる割合


 本研究では、東京電力福島第一原子力発電所周辺の帰還困難区域解除のために実施されている除染作業のガイドラインで示されている作業員の被ばく評価方法の最適化を目的とし、2020年度に調査当時帰還困難区域であった住宅地5エリア(Site A〜E)で行われた家屋解体及び土壌表面の被覆などの線量低減措置に伴う作業において、全作業員の外部積算被ばく線量を取得するとともに、一部の作業員の区域内の行動履歴をGPSによる位置情報として記録しました(図1)。本作業における作業員別の積算被ばく線量は最大で1.1 mSvでした(図2)。取得したGPSデータを元に、空間線量率から計算する計画値と実測した被ばく線量のデータから、計画値の精度の指標となる相対偏差(RD: Relative Deviation)を作業エリア及び作業種別ごとに計算しました。RD値は1.4をピークに分布しており、この数値は、計画値が実測値の2.4倍となることを意味します。また、計画値が過小評価となるRD値が負の数値となったのは全作業員の9 %程度であり(図3)、その作業のほとんどが森林内であったこと、線量低減作業前の作業が多かった解体工の計画値は他の作業と比較して実測値に近いことが分かりました(図4)。
 本研究成果は、除染作業員の放射線防護手法の最適化につながると考えられます。


謝辞

本成果は、内閣府からの受託事業「令和3年度特定復興再生拠点区域外における線量低減措置等の効果実証事業」の成果の一部です。


著者(研究者)情報

著者(研究者)氏名 | 眞田 幸尚
福島廃炉安全工学研究所 廃炉環境国際共同研究センター
環境モニタリンググループ

参考文献

眞田幸尚ほか, 帰還困難区域内での家屋解体・線量低減措置に伴う作業員の外部被ばく評価解析, 日本原子力学会和文論文誌, vol.22, issue 2, 2023, p.87–96.

外部論文: https://doi.org/10.3327/taesj.j22.011

公開日 2025年 1月 7日

 福島第一原子力発電所事故の対処に係る研究開発(環境回復に係る研究開発) 

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