1.1 世界的に注目されるNSRRによる反応度事故模擬照射実験
―使用済燃料を減らすための燃料高燃焼度化に対応して―

 


図1-1  原子炉からの制御棒の飛び出しによる出力暴走事故

制御棒の飛び出しにより原子炉出力がパルス状に上昇し、燃料が過熱されます。条件によっては燃料破損が生じます。

 


図1-2  NSRR照射カプセル

燃焼の進んだ燃料を短く加工し、水を満たした密封容器に入れ、NSRRで事故を模擬したパルス照射を行います。


図1-3  長期使用して燃焼度が高まった燃料の破損しきい値

縦軸は出力暴走による燃料の発熱量で、白抜きの点は破損が生じなかった実験を、中実の点は燃料破損が生じた実験を示します。燃焼度が高くなると破損しきい値が低下します。



原子力発電所は、万が一、事故が発生しても周辺に住む人たちが危険にさらされないように、非常に厳しい事故を想定して、その影響が十分小さくなるように作られています。事故の影響を評価するためには、想定され得る事故よりもさらに厳しい条件で原子炉や燃料がどうなるかを実験で調べ、健全性が保たれる限界を知る必要があります。
また、近年はウラン資源の有効利用と原子力発電で発生する使用済燃料の量を少なくするために長期間使用できる原子炉燃料の開発(高燃焼度化)が世界的に進められています。燃料を原子炉で長期間使用すると、核分裂を起こし発熱する酸化ウランペレット中には、ガスなどの核分裂の燃えかすが溜まります。燃料ペレットを包む金属製の管も冷却水による腐食や強い放射線の影響を受け、長期間使用すると機械的性質が徐々に劣化しますので、事故時にも健全性が保たれることを調べる必要があります。
研究用の原子炉NSRRでは、原子炉の出力を調整する制御棒の駆動機構が破損し、原子炉容器内の高い圧力によって制御棒が飛び出してしまい原子炉出力が暴走した場合(これを反応度事故と呼ぶ、図1-1)に、燃料がどのように壊れるかを実験により調べています。この実験では、原子力発電所で試験的に長期間使用した燃料の一部を、照射カプセル(図1-2)に密封し、出力暴走を模擬した条件でパルス照射する実験を進めています。NSRRでは実際の原子炉で起こりうる事故条件より大幅に厳しい条件を含めて広い範囲で実験を行ってきました。その結果、図1-3に示すように、燃料の燃焼度が上がると、燃料の破損は、低燃焼度域とは異なるメカニズムで、大幅に低い発熱量(エンタルピの増加)で生じることを世界に先駆けて明らかにしました。この破損は、PCMI(ペレット-被覆管機械的相互作用)破損と名付けられ、安全評価の上で重要な知見として世界的に注目されています。燃焼の進んだ燃料では核分裂性物質が減少しているため出力暴走時においても発熱量が小さく、このしきい値の低下は、現在使用されている燃料燃焼度範囲では安全上の問題とはならないことを確認しています。
この研究の成果は、高燃焼度燃料の安全性評価の基盤的な知見となるとともに、今後、さらに長期間使用するための信頼性の高い軽水炉燃料の開発に利用されます。



参考文献
T. Fuketa et al., Behavior of High-Burnup PWR Fuels with Low-Tin Zircaloy-4 Cladding under Reactivity-Initiated-Accident Conditions, Nucl. Technol., 133(1), 50 (2001).

ご覧になりたいトピックは左側の目次よりお選びください。

 



たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2001
Copyright(c) 日本原子力研究所