1.2 世界初の高温高圧極限で照射済燃料からの放射性物質放出実験

 


図1-4  VEGA実験装置

高周波誘導加熱により試料燃料から放出した放射性物質は、キャリアガスとともに水平配管中を運ばれ、温度勾配管やフィルターに捕集されます。また、微粒子となった放射性物質の粒径分布は、手前のカスケードインパクターで測定します。核種別の放出割合は、試料燃料に対するオンラインγ線計測や実験後に下流側配管への沈着量を評価することにより求めます。

 


図1-5  常圧条件と高圧条件の実験で観測されたCs放出割合

1.0 MPa下の Cs放出割合(燃料からの放出量/昇温前の燃料中存在量)は、雰囲気圧力以外は同じ条件で実験を行ったにもかかわらず、0.1 MPa下に比べて約20%低下するのを世界で初めて観測しました。



軽水炉の安全性を確認する研究の一環として、万一、原子炉で燃料が融点(約2,800℃)以上の高温になった場合の、燃料からの放射性物質の放出挙動を調べるため、図1-4に示す「VEGA」と呼ばれる実験装置を用いて研究を進めています。
軽水炉の燃料中には、燃焼が進むにつれて放射性物質が蓄積されます。そのため原子炉は、万一事故が発生した場合でも、放射性物質が施設外へ放出される可能性をできるだけ小さくするように設計され運転されていますが、放射性物質の放出挙動を十分に把握することは重要な課題です。これまでに世界中で様々な研究が広範に実施され、事故時の放射性物質の挙動についても多くのことがわかってきました。しかしながら、燃料の融点を超えるような高温状態や、雰囲気が高圧条件である場合の挙動についての知見は、実験の困難さのためにほとんど実施されていませんでした。
VEGA実験では、加熱炉材料としてトリア(ThO2)製構造物を用いることにより、水蒸気雰囲気下において最高3,000℃まで昇温して1.0 MPaまでの加圧雰囲気下で放出挙動を調べ、これまでデータがあまり得られていない短半減期・低揮発性核種およびアクチニドの放出挙動を明らかにすることにしています。特に、雰囲気圧力の影響を調べる実験は世界で初めてであり、最大の特長と言えます。
実験は11年度に開始し、装置の性能確認を兼ねた実験をこれまでに3回実施しました。そのうち2回目の実験では、世界で初めて1.0 MPaの加圧雰囲気下で実験を行い、図1-5に示すように0.1 MPa下の実験に比べてCs放出割合が約20%抑制されることを確認しました。これは、燃料からの放出過程を1)UO2結晶粒内の原子拡散、2)燃料内開気孔中の気体分子拡散、の2段階拡散で記述されると仮定した場合、高圧下では、2)の拡散過程において、分子間距離の減少に伴って分子の衝突頻度が増加し、拡散時間が増大することと関係していると考えられます。詳細は今後さらに検討する予定です。
今後5年間でMOXを含む試験燃料を種々の雰囲気条件下で最高3,000℃まで昇温して、シビアアクシデント時の放射性物質の放出挙動を体系的に調べる研究を行う予定です。得られた成果は、放出機構の解明とソースタームの高精度評価に役立てることにしています。



参考文献
T. Kudo et al., Influence of Pressure on Cesium Release from Irradiated Fuel at Temperatures up to 2773 K, J. Nucl. Sci. Technol., 38(10) , 910(2001) .

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果 2001
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