1.5 臨界超過時の溶液燃料の挙動をみる
―TRACY溶液挙動観察システムの開発―
 


図1-10  TRACY溶液挙動観察システムの主要系統構成


拡大図(80KB)

図1-11  JCO臨界事故で推定された添加反応度条件を模擬するため溶液燃料を1分当たり58 lで炉心タンクに加えた場合の出力とボイドの振る舞い

第1出力パルスの瞬間(非常に強い放射線のため耐放射線光ファイバースコープが発光)。


再処理施設や核燃料取扱施設における溶液核燃料体系において、臨界を超えた場合には、出力の急昇に伴って溶液の放射線分解によるガスが発生します。このガスの微細気泡が集まってボイドとなって液面から離脱するため、出力はこのボイドの振る舞いに大きく依存します。したがって、臨界超過時の事象を明らかにする上で、実際のボイドの様子を観察しそれに基づいたモデル化を行うことが重要となります。そこで、TRACYで燃料溶液とボイドの振る舞いをリアルタイムで観察するシステムを開発しました。
図1-10に溶液挙動観察システムの主要系統を示します。光ファイバースコープは、TRACY炉心タンク上部から挿入され、液面全体の約1/4を観察することができます。炉心タンク内の映像は、耐放射線ビデオカメラでカラー動画に変換されビデオレコーダにリアルタイムで記録されます。
このシステムを用いて、JCO臨界事故で推定された反応度添加条件を模擬した実験結果を図1-11に示します。臨界を超えて反応度(溶液燃料)を添加すると出力が急昇し、それに伴う溶液燃料温度の上昇とボイドの生成が相まって負の反応度フィードバックにより出力は降下します。生成したボイドが液面に浮上するのに伴い再び出力は上昇します。この出力の振動は、添加した反応度が溶液燃料の温度上昇による負の反応度効果で補償されるまで続きます。溶液燃料を加えて反応度を添加し第1出力パルスが観測されたのち、2〜3秒してボイドがドーナツ状に浮上してくるのが観察されました。このような溶液およびボイドの振る舞いに関する映像は、世界的にも類例がなく貴重なものであり、出力や圧力の時間変化と対比することによって、計算コードの開発・改良に役立つものです。



参考文献
K. Ogawa et al., Development of Solution Behavior Observation System under Criticality Accident Conditions in TRACY, J. Nucl. Sci. Technol., 37(12), 1088 (2000).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果 2001
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