3.5 核融合燃料の連続注入に光
―秒速700 mの水素の氷を5発/秒の割合でJT-60プラズマに連続発射―
 


図3-10  遠心力を利用して加速した核融合燃料の入射の原理図

温度12 Kの製氷部で棒状の氷を作り、切断部で、押し出された氷を1秒間に最大10個の2 mmの立方体に切断します。加速部のローターの長さは900 mm、回転数は266 Hz、最大速度は秒速1,000 mが可能です。


図3-11  JT-60プラズマに氷を連続的に入射したときの、プラズマ密度の挙動の一例

水素の氷の入射に同期して、プラズマ密度の上昇が観測されました。


核融合炉の燃料をプラズマに注入する方法の一つに、水素の氷を高速で入射する方式があります。原研では、これまで、空気銃と同じ原理を用いて、200気圧の水素ガスで水素の氷を発射させ、秒速2,300 mを達成しました。しかし、空気銃方式では、連続発射ができません。これを克服するために、遠心力を用いた加速方式が世界で開発されてきました。原研では、ドイツのマックスプランク・プラズマ物理研究所の協力を得て、遠心力方式の開発を行ってきました。
原理図を図3-10に示します。重水素ガスを12 Kの温度まで冷やして棒状の氷を作り、それを所定の長さに切って、高速で回転しているローターの中心に落とします。落下した氷は、ローターに切られた溝にそって加速され、ローターの端部から発射されて、輸送管を通ってプラズマに入射されます。
開発に当って直面した課題は、氷の蒸発ガスによる悪影響でありました。氷表面の蒸発により発生した水素ガスが、製氷部の温度を上昇させ、また後発の氷の軌道を乱します。氷がプラズマまで届かなかったり、2個の氷が重なって同時に入射された場合がありました。
これを解決するために、製氷部と加速部を真空遮断して、製氷部の温度上昇を防ぐとともに、各所にガス抜きの格子状窓を設けました。さらに、輸送管の接続部に傾斜を設け、また回転ローターの溝に屋根を設けるなどの考案を行い、氷の動きを安定させました。
その結果、2 mmの立方体の大きさをもつ重水素の氷を、秒速700 mで、1秒間に5発の割合でJT-60のプラズマに入射することに成功しました。入射時間は最大10秒です。その一例を図3-11に示します。プラズマの密度が、氷の入射に同期して階段状に上昇していることがわかります。
実際の核融合炉に用いるためには、氷の大きさや入射周期の安定化など、さらなる性能向上が必要ですが、技術的に十分な見通しを立てることができました。



参考文献
平塚一 他,JT-60Uにおける遠心加速方式ペレット入射装置の開発,プラズマ・核融合学会誌,76(11),1189 (2000).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果 2001
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