3.7 ITER用大型超伝導コイル技術、国際協力で最難関を突破
―わずか21秒で13 T の高磁場達成―
 


図3-13  CSモデル・コイルでは、交流損失による導体の温度上昇を抑えるために、ニオブスズ超伝導素線にはクロム被覆が、またそれらを撚ったサブケーブルにはインコロイテープが巻き付けてあるケーブル・イン・コンジット型導体が開発されました。


図3-14  4極(日本、米国、EU、ロシア)の協力によって完成した外径が3.6 m、高さが2.8mのCSモデルコイル


図3-15  原研那珂研究所の試験装置に設置されたCSモデルコイル


図3-16  目標である31秒より早い21秒で13 Tの磁場を発生させることに成功したときの電流波形と導体の温度



ITER(国際熱核融合実験炉)の中心には、プラズマを誘導加熱するための中心ソレノイド(CS)が配置されます。 ITER では長時間の燃焼と低消費電力を実現する必要があるためCSの超伝導化は必須です。直流励磁するトロイダル磁場コイル(TF)が早くから超伝導化されていますが、CSは高速励磁するため技術的に非常に難しく今日まで超伝導化を実現していません。そこで、ITERの工学設計活動では国際協力によってCSを超伝導化するための技術を開発する「CSモデル・コイル計画」が進められました。CSの超伝導化技術で最も大きな課題はCSの高速励磁中にその導体に渦電流が生じ、それにより発生する熱(交流損失と言う)によって導体の温度が上昇し、超伝導状態が常伝導状態に転移してしまうことです。この交流損失を小さくする工夫として、導体には、まず約0.8 mmの太さのニオブスズ超伝導素線1,152本を用意し、その表面にクロム被覆を施します。さらに、それらの素線を6分割し192本ごとに撚り合わせたサブケーブルに高抵抗のインコネルのテープを巻き付け、その6束を12 mm径の冷却中心管に巻き付けたフルケーブルをインコロイの管に挿入した構造が開発されました(図3-13)。本導体は、電気絶縁を施した後、ソレノイド状に巻かれ18層からなるCSモデルコイルが完成しました(図3-14)。実験は原研で行い(図3-15)、目標の31秒より早い21秒で13 Tの磁場(運転電流46 kA、蓄積エネルギー640 MJ)を発生させることに成功し(図3-16)、ITER建設の見通しが得られました。
この計画は、日本、米国、EU、ロシアがそれぞれの得意とする分野を担当することにより課題を克服し、かつ効率良く製作が進められ達成されました。これは、まさにITERを国際協力で建設する予行練習でした。



参考文献
T. Kato et al., First Test Results for the ITER Central Solenoid Model Coil, Fusion Eng. Des., 56-57(4), 59 (2001).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果 2001
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