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原子核は陽子・中性子で構成されています。近年の重イオン衝突で生じた破砕片を再びビームとして用いる実験技術の発展により、人類の手にできる原子核は陽子と中性子の数が大きく異なった領域へと広がっています。そこでは、これまで研究されてきた通常核では見られなかった現象が数多く発見されています。そのひとつに中性子過剰核における“クラスター”構造の発現があります。 原子核中の核子はそれを構成する核子全体が形成する平均的な場の中を個々に運動するという描像が一般に良く成り立ちます。これにより魔法数(原子核が特に安定となる陽子と中性子の個数:2、8、20、28、50、82、126)が説明されます。ところが、中性子過剰な原子核ではこの魔法数が破れていることが明らかになってきています。これは中性子数の増加に伴う原子核の構造変化と密接に関わっています。図4-2はホウ素(B)同位体の構造変化の理論的予測です。中性子数が魔法数(N=8)にあたる13Bは球形であるのに対し、中性子数の増加に伴い原子核の変形が大きくなり、中性子数最大の19B は密度の中心点を二つ持つHe+Li的な“クラスター”構造を持っています。しかしながら、現在までのところ、このような構造の実験的な同定には至っていません。 そこで、19Bの持つクラスター構造を確かめる実験的手法として、重イオン衝突における破砕反応を利用する方法を考えました。図4-2のような13Bと19Bの構造の違いは原子核の壊れ方に相違をもたらします。図4-3は反対称化分子動力学法による19B+14Nおよび13B+14N反応計算の結果生じる入射核破砕片のうちHeとLi同位体が同時に生成される断面積の入射エネルギー依存性を示したものです。19B のクラスター構造を反映してHeとLi への同時崩壊は低入射エネルギー領域において19Bの方がかなり大きくなっています。したがって、19Bのクラスター構造を実験的に同定するには原子核破砕反応の際に生成されるHeとLi同位体の相関を測ればよいことがわかります。 |
●参考文献
H. Takemoto※ et al., Incident-Energy Dependence of the Fragmentation Mechanism Reflecting the Cluster Structure of the 19B Nucleus, Phys. Rev., C, 63, 034615 (2001). ※博士研究員 |
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