4.3 アクチノイド内包フラーレンの合成と分離
 


図4-4  アクチノイドフラーレンのHPLC溶離挙動

U、Np、AmフラーレンのHPLC溶離挙動を示します。図中最下段にはランタノイド元素のセリウム(Ce)を内包している金属フラーレンの溶離挙動を比較のため示してあります。HPLCの溶離挙動は主成分の金属フラーレンの種類、フラーレンを構成する炭素原子の数、金属フラーレンの電子状態などが反映されます。図のようにアクチノイドフラーレンとCeフラーレンの溶離挙動が非常に類似していることはこれら金属フラーレンの主生成物、その炭素原子数、金属フラーレンの電子状態がほぼ同じであることを示しています。


図4-5  ウラン内包フラーレンの質量スペクトル

質量数1222に単一の大きな信号が確認できます。このことからU@C82は高い純度で単離されたことがわかります。


金属フラーレンはカゴ状分子“フラーレン”の内部に金属原子を内包している包接化合物の一種です。この金属内包フラーレンは、内包された金属とフラーレンとの相互作用で金属を内包していない空のフラーレンとは異なる、特徴的な電子特性をもつといわれています。このため金属フラーレン特有の化学反応性や物性を示すと考えられ、新機能性材料の開発という点からも注目されています。
私たちはタンデム加速器で合成したウラン(237U)、ネプツニウム(239Np)、アメリシウム(240Am)の放射性トレーサーを用いてアクチノイド元素を内包したフラーレンの合成と高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による選択的分離・精製に世界で初めて成功しました。図4-4はU、Np、AmフラーレンのHPLC溶離挙動を示したもので、比較のため、ランタノイド元素Ceを内包したフラーレンの溶離挙動も示してあります。アクチノイド内包フラーレンの溶離挙動はCeフラーレンのものとよく類似していることがわかります。HPLCの溶離挙動には主成分の金属フラーレンの種類、フラーレンを構成する炭素原子の数、金属フラーレンの電子状態などが反映されます。したがって、U、Np、AmフラーレンはCeフラーレンと同種のM@C82(@は炭素原子82個からなるフラーレンのカゴ構造中に金属原子Mが内包されていることを示します)タイプの金属フラーレンと推測できます。次に、私たちはUフラーレンの大量合成を行い、主成分である金属フラーレンの単離を行い、その性質を質量分析法、紫外可視近赤外吸収分光法、X線吸収分光法を用いてさらに詳しく調べました。
質量分析の結果、Uフラーレンの主成分はU@C82(図4-5)であり、また、紫外可視近赤外吸収測定の結果得られたU@C82の吸収スペクトルはLa、Ceなどのランタノイド元素を内包したM@C82のものと非常に類似していました。吸収スペクトルは分子軌道間のエネルギー差や遷移確率などを反映することから、U@C82とランタノイドM@C82の電子状態はほぼ同じであると考えられます。M@C82に内包されているLaやCeは3+の酸化状態であることがこれまでに知られていることから、フラーレンに内包されているU原子の酸化状態は3+であることを確認しました。



参考文献
K. Akiyama et al., Isolation and Characterization of Light Actinide Metallofullerenes, J. Am. Chem. Soc., 123, 181 (2001).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果 2001
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