4.5 有機分子を使ってミクロンサイズの絵を描く
 


図4-8  倒立型顕微鏡を用いたミクロンサイズ領域への有機分子注入実験装置とターゲット構造の概略図

集光レンズを使って、レーザー光を対物レンズの焦点に集光させます。するとレーザー光を受けたソースフィルム中の有機分子が光励起して、レシーバーフィルムに注入されます。


図4-9  クマリン545分子注入スポットで描かれたミクロンサイズ十字架

レーザー光照射とX-Yステージ移動を繰り返すことにより、大面積のポリマーフィルムに有機分子注入スポットで文字や絵などを自由自在に描くことができます。


図4-10  最小分子注入スポット

最小注入サイズは4ミクロンφです。さらに将来ナノオーダーサイズの注入スポットが得られるようになれば、機能性有機分子クラスターのサイズ効果など新しい物理現象が見つかる可能性があります。



次世代デバイスとして注目されている有機分子素子の作製には、機能性有機分子を高分子フィルムの任意の位置にミクロン・ナノサイズで配置する技術の確立が必要不可欠であり、そのためのレーザー分子注入法の基礎研究を進めています。この方法は、機能性有機分子を分散させた高分子フィルムに強いレーザー光パルスを照射すると、高分子フィルムで爆発的にエッチングが起こり、有機分子が飛び出して別の物質に注入される「アブレーション転写」という現象を利用しています。
実際には、注入させたい機能性有機分子を含む高分子フィルム(ソースフィルム)と、何も含まない高分子フィルム(レシーバーフィルム)を重ね合わせてターゲットとし、そこに倒立型顕微鏡とパルスレーザーを組み合わせて作った装置を使って、レーザー光をミクロンサイズ以下に絞って照射します(図4-8)。
さらにこの分子注入装置にミクロン精度で位置制御可能なX-Yステージを組み込み、その上にターゲットを乗せてステージ位置を外部から制御しながら分子注入すれば、高分子フィルムに任意の有機分子注入スポットパターンを描くことができるはずです。
図4-9は、クマリン545という蛍光色素を使って高分子フィルムに描いたミクロンサイズの十字架です。さらに照射パルスレーザー強度やターゲット構造の最適化を行うことによって、最小直径4 μmの微小スポット領域に蛍光色素を注入することに成功しました(図4-10)。
この技術は、例えば有機エレクトロルミネセンス(EL)物質を使ったディスプレイなど、幅広い応用が期待できるでしょう。



参考文献
M. Kishimoto et al., Microscopic Laser Patterning of Functional Organic Molecules, Adv. Mater., 13 (15), 1155 (2001).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果 2001
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