5.2 高エネルギー粒子のふるまいをより正確に予測する
 


図5-3  水銀ターゲット側面の209Bi(n,4n)206Bi反応率分布の実験と計算の比較

赤丸()は米国・ブルックヘブン国立研究所のAGS(Alternate Gradient Synchrotron)加速器施設において、12 GeVおよび24 GeVの陽子ビームを直径20 cm、長さ130 cmの円筒型の水銀ターゲットに入射し、ターゲット側面で測定した209Bi(n,4n)206Biの反応率分布で、点線はガイドライン。
太実線は原研のNMTC/JAMによる結果。細実線は米国・ロスアラモス研究所のLCS2.7による結果。



大強度陽子加速器計画で提案されている高エネルギー陽子による核破砕中性子源装置や原子核・素粒子実験施設の設計では、ターゲットでの中性子、陽子、中間子等の粒子の発生や、周囲の構造体の中を輸送される過程での二次中性子生成、エネルギー損失等の挙動を正確に予測することが必要です。
粒子挙動の予測には高エネルギー粒子輸送コードを用いますが、従来の原研のコードは適用エネルギーの上限が3.5 GeVという制限がありました。そこで、クォークとグルーオンに対応するパートン粒子とハドロン粒子の各々を扱う高エネルギーカスケードモデルを組み込み、適用エネルギーを200 GeVまで拡張し、反応に関わる全ての粒子を考慮するように改良しました。また、従来の適用エネルギー範囲では、中性子および陽子の輸送に関わる断面積や弾性散乱の角度分布を信頼性の高いデータに改訂しました。
今回改良を加えたコード(NMTC/JAM)について、12 GeVおよび24 GeVの陽子ビームを直径20 cmの円筒型の水銀ターゲットに入射し、ターゲット側面に配置した放射化検出器の反応率分布を測定した結果を用いて、精度を検証しました(図5-3)。中性子とビスマスの反応209Bi(n,4n)206Biの反応率分布について、NMTC/JAMは実験結果とよく一致しています。他の放射化検出器についても同様に良好な結果が得られています。これは高エネルギー核反応による粒子発生特性の予測精度の向上を反映した結果です。今回開発したコードは高エネルギー加速器施設の設計などの工学的利用に大いに役立つものと期待されます。



参考文献
H. Takada, Recent Progress of Nucleon-Meson Transport Code Development, Proc. Int. Conf. on Mathematics and Computation, Reactor Physics and Environmental Analysis in Nuclear Applications, Madrid, Spain, Sep.27-30, 1999, 929 (1999).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果 2001
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