| クラスターは数個から数百個の原子が集まってできた、直径“数ナノメートル”程度の粒子です。同じ原子が集まったものでもこのくらいの大きさになると、導電性や発光特性など、様々な物性が通常の“バルク物質”とは異なってきます。これまで、クラスターは主にレーザーや電子ビームをターゲットに照射して作られてきました。これに対し、イオンビームを使えばイオンとターゲットとの反応を利用して、バルク物質では得られない組成のクラスターを作ることができます。しかし、クラスターの生成効率が悪く、十分な量を得るためには非常に高い輝度のビームが必要でした。私たちは、SF5+のように少し大きな分子イオンをSiに照射することにより、他のイオンに比べて顕著なクラスター生成を見い出しました(図6-11)。この結果、1 µA/cm2程度のビームでもこれまでの100倍以上の効率でクラスターを取り出すことに成功しました(図6-12)。大型の分子イオンが固体表面に衝突すると、表面の励起領域は図6-13のように原子イオンの場合より大きく広がります。この結果、原子の脱離が促進されクラスターの生成効率が高くなったものと考えます。Siの他, C, B, Beなど種々のターゲットでも、顕著なクラスター生成を観測しました。さらに、C6F5+など炭素を含む分子イオンをSiに照射すると、Si-Cのような二元系クラスターを生成できることもわかりました。多元系クラスターや同位体クラスターのように、全く新しい物性を持つと予想されるナノスケールの素材作製にも道が拓けると期待しています。 |