7.1 放射性物質大気拡散予測システムの環境保全への利用
―三宅島火山ガス拡散予測に本領発揮―
 


図7-1  火山ガス(二酸化イオウ)濃度のシミュレーションと実測値の比較

日時:2000年8月28日、16時
左図:シミュレーション結果、赤色部分は高濃度地域
右図:環境庁監視システムの実測値、赤丸内の地域で高濃度の二酸化イオウを検出
シミュレーションと実測値の一致がよくわかります。


図7-2  火山ガス(二酸化イオウ)の地上濃度分布図の例

ホームページ:http://des.tokai.jaeri.go.jp/
二酸化イオウ放出量:1時間に1 m3(1日約70 kg)連続噴出と仮定
図の赤、橙、黄、緑は、濃度分布を表し、赤が高濃度です。
火山ガスは、冬季には太平洋に飛散し、春、夏、秋には本州各地に流れる傾向にあります。
左図:2001年3月16日15時。この頃まで、冬型の季節風により、ガスは海上に流されることが多かったのです。
右図:2001年5月15日15時。4月以降は高低気圧の通過に伴い、東海から関東への拡散がしばしば見られました。



火山ガスには、二酸化イオウ等の有害物質が含まれています。原研では三宅島の火山ガスについて、その挙動を解明し、いち早く予測結果をホームページで公開して注意を呼びかけています。
火山ガスの挙動の解明と予測には、これまでに開発した計算システムSPEEDI(放射性物質大気拡散予測システム)を利用しました。SPEEDIは詳細な大気力学モデル、濃度モデル等で構成されています。大気力学モデルは、気象庁のGPV(気象数値予報格子点データ)を用いて、風速、温度、乱流等の変化を三次元で計算します。この計算値から濃度モデルを用いて、気象変化による火山ガスの挙動とその濃度分布を知ることができます。
2000年8月28日午後の関東西部の異臭騒ぎについて、SPEEDIを利用したシミュレーションによりその原因を解明しました。同日未明に三宅島で噴出した火山ガスは、午前中は安定した南風に乗って関東西部の上空に達しました。日中になって気温が上昇し大気混合層が発達したため、火山ガスの1部は内陸部に降下しました。そのため関東西部の人々が異臭を感じ、環境庁の監視システムは高濃度の二酸化イオウを検出したわけです。図7-1に示すように、シミュレーションと監視システムの検出値はよく一致しています。噴出した火山ガス中の二酸化イオウは毎時約2,500トンでした。
ホームページ(http://des.tokai.jaeri.go.jp/)では、SPEEDIと最新の気象庁数値予報を用いて算出した三宅島火山ガスの挙動を常時公開しています。図7-2は、火山ガスの地上分布図の最近の例です。この予測技術については、さらに、大陸からのウンカや黄砂の飛来、公害物質の飛散、工業立地等のアセスメントへの利用を検討しています。



参考文献
永井晴康 他,SPEEDIによる三宅島火山性ガスの大気拡散シミュレーション,JAERI-Research 2001-012 (2001).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果 2001
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