8.1 青色パルスレーザーを求めて高効率波長変換に成功
 


図8-1  パルスレーザーから効率よく第2高調波を取り出す方法

Ti:サファイアレーザーからの短パルス(基本波:〜800 nm)を2つに分割し、両者の波面が非線形結晶内で少しずつ重なるように2個の回折格子を傾けます。同時に周波数成分の分布(チャープ)が生じます。こうして非線形結晶内で2つの入力パルスとその重なり部分から発生する第2高調波パルスの3つの波の整合をとりつつ第2高調波を取り出します。


図8-2  第2高調波への変換効率

基本波レーザー強度に対するエネルギー変換効率を示します。この方法により、強度がおよそ25 GW/cm2で最大の値30%を達成しています。基本波にチャープを与えない場合の変換効率は0.1%未満でした。



原研で開発した100 TW超短パルスTi:サファイアレーザーは波長〜800 nm、パルス幅20 fs以下です。私たちはこのレーザーの波長を短かくする研究に取り組んでいます。短波長にすると光子エネルギーが大きくなり、X線レーザーの開発やレーザーとプラズマとの相互作用の研究などに顕著な進展をもたらすものと考えられます。
レーザー光の波長を変換するポピュラーな技術はKDP(KH2PO4)やBBO(BaB2O4)などの非線形光学結晶を使って高調波を取り出すものです。この技術は周波数のそろったレーザーに対して確立されています。ところがレーザー短パルスというのは広い範囲の周波数成分を含み、整合性をとることが難しく、第2高調波への変換効率は0.4%以下で実用に供することができませんでした。
私たちの解決法は、基本波パルスを回折格子により周波数によって広げ、それぞれの成分について位相整合をとりつつ波長変換するものです(図8-1)。すなわち入射基本波を2つに分けて非平行に配置した回折格子で波面を変え、結晶内で2つの基本波パルスの裾の部分が少しずつ重なって第2高調波を発生させます。さらに基本波パルスの入射角を調整することにより第2高調波の自己圧縮によって短パルスに戻すことができ、これによって30%というエネルギー変換効率の極めて高い結果を得ました(図8-2)。



参考文献
M. Aoyama et al., Noncollinear Second-Harmonic Generation with Compensation of Phase Mismatch by Controlling Frequency Chirp and Tilted Pulse Fronts of Femtosecond Laser Pulses. Jpn. J. Appl. Phys., 39, 3394 (2000).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果 2001
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