10.4  新しい二相流シミュレーション法の信頼性アップ
―格子ガスモデルの表面張力新計算法の開発―
 


図10-9  格子ガスモデルにおける格子分割の例

粒子は各格子点にだけ存在します。一つの格子点に2個の粒子が入ると衝突を起こし、予め定められた規則に従って運動方向を変化させます。


図10-10  格子ガスモデルによる計算で形成された液滴


図10-11  表面張力の新しい計算法の原理と計算例

液滴表面の表面張力は、表面の一部に円をフィットしてその接線方向と格子の方向が非平行(a)と平行(b)の場合の組み合わせで決定します。(c)はラプラス法の結果との比較を表しています。半径が大きいところで一致しています。ラプラス法では求められない半径の小さいところも計算できます。


液体や気体等流体の運動は、通常、ナビエストークス方程式と呼ばれる偏微分方程式を数値的に解いて求められます。しかし、最近では格子ガスモデル(LGM)といわれる方法で流体挙動を求める研究もなされるようになりました。LGMを使うと2相流シミュレーションのように気体と液体等、異なる「相」間での相変化が重要な系の問題を容易に解くことができます。
この方法では,空間を規則的な格子(例えば二次元三角形格子)に分割し(図10-9)、この格子上に配置された人工的な多数の粒子が、予め設けられた粒子の衝突の規則に基づいて格子上を運動します。これらの粒子の運動のシミュレーションによって、普通の流体と同じ振る舞いを見ることができます。相変化のあるような系でも偏微分方程式を解くときのような困難さはありません。
この方法で、気体中での液滴形成シミュレーションを行うと液滴の形は円にはなりません(図10-10)。空間を格子に分割したことを反映して、液滴の表面張力が表面上で一定でないためです。相変化を伴う問題では表面張力の役割は極めて重要なので、この方法を用いて研究を行うためには、様々な形状の界面の表面張力が計算されることが望まれます。今までの表面張力計算法では任意パラメータを導入する必要がありましたが、今回開発した方法によれば一意的に解が得られるのでLGMの適用範囲を明確にして信頼性の高いものとすることができました(図10-11)。



参考文献
K. Ebihara et al., A Method for Calculating the Surface Tension of a Droplet in a Lattice-Gas Model with Long-Range Interaction, Eur. Phys. J. B, 18, 319 (2000).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果 2001
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