11.1  レーザーで金属表面の放射能汚染を掃除
 


図11-1  雰囲気ガスとの化学反応を利用したレーザー除染法の原理

金属表面の放射能を含んだ腐食生成物層は、雰囲気ガス中での高出力の紫外パルスレーザー照射により生成する活性な化学種と反応し、除去し易い状態に変換されます。


図11-2  SF6ガス中におけるレーザー照射による除染

模擬汚染金属表面の腐食生成物層は、SF6ガス中でのレーザーの照射により生成したフッ素と反応して揮発し易いフッ化物に変化するため、腐食生成物層が下地の金属から分離されます。


図11-3  レーザー除染後の模擬汚染金属の外観

レーザー照射した領域では腐食生成物が除去され、下地の金属が観察されています。


図11-4  レーザー除染回数と除染係数(除染前の放射能/除染後の放射能)との関係

大気中での除染に比べ、SF6ガス中では除染係数が2倍以上向上します。



原子力施設の廃止措置で発生する大量の金属廃棄物は、資源有効利用の観点から、放射能を取り除いてリサイクルすることが計画されています。金属廃棄物の大部分の放射能は、酸化物から成る腐食生成物層といわれる金属表面の薄い膜の中に存在しており、これまでは、この腐食生成物層を取り除くために、主に化学溶液で溶かす方法(化学除染法)が用いられてきました。しかし、放射能を含んだ廃液などの二次廃棄物の発生量を減らすこと、なるべく多くの放射能を除去できるようにすることなどが重要な課題となってきました。
これらの課題を解決するため、私たちはレーザーを利用したいろいろな除染法について検討し、雰囲気ガスとの化学反応を利用した新しいレーザー除染法を開発しました。これは、高出力の紫外パルスレーザー光の照射下で、常温では安定で取扱い易い雰囲気ガスと金属廃棄物表面の腐食生成物層とを反応させ、放射能を下地の金属から分離するという方法です(図11-1)。
雰囲気ガスをいろいろ変えて試験した結果、六フッ化硫黄(SF6)を用いると、腐食生成物層はレーザー照射により生成するフッ素と反応して揮発し易いフッ化物に変化するため(図11-2)、高い除染効果をあげることができました(図11-3、11-4)。この技術が実用化できれば、原子力施設の廃止措置で発生する金属廃棄物から放射能を取り除き、リサイクルできる金属を増やすことが可能になると期待されています。



参考文献
Y. Kameo et al., Removal of Metal Oxide Layers Formed on Stainless and Carbon Steel Surfaces by Excimer Laser Irradiation in Various Atmospheres, Nucl. Technol., 137(2), 139, (2002).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果 2001
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