12.2 照射材の繰り返し疲労変形をレーザー計測で探る
 


図12-3  レーザーマイクロゲージを用いた軸歪測定システムおよび油圧クランプ方式の概念図

油圧ロッドを開放した状態で、試験片をセットします。試験時は、油圧ロッドで試験片を固定しレーザーマイクロゲージで試験片ツバ部の変位を測定します。

図12-4  疲労試験片形状(平行部;長さ6 mm、直径4 mm)

疲労試験片は、レーザーマイクロゲージを用いた歪測定を可能とするために、平行部にツバを有する特殊形状をしています。

図12-5   低サイクル疲労試験結果

照射材の疲労寿命は、非照射材に比べ短くなっています。


原子炉構造材料は、原子炉運転中の振動や熱応力などによる繰り返し応力負荷を受け、同時に中性子照射環境下で使用されます。このため原子炉の安全確保には、材料試験炉(JMTR)などの試験炉で中性子照射した試験片を用いて低サイクル疲労やクリープ疲労試験などを行い、材料の疲労特性に及ぼす中性子照射の影響についてのデータを取得する必要があります。
JMTRホットラボ施設では、中性子照射された構造材料の繰り返し疲労特性を評価するために、非接触で高精度の歪測定が可能なレーザーマイクロゲージを採用した遠隔操作型高温疲労試験装置(図12-3)を開発しました。レーザーマイクロゲージは、2つのツバを付けた形状の疲労試験片(図12-4)においてツバ部間隔の変化を分解能0.1 μm、精度±0.5%で、1秒間に480回の高速データ収集が可能です。また、セル内に設置したレーザー送受光部のIC回路には、放射線の影響が少ない回路を利用しました。さらにレーザー受光部からの出力信号を移動平均化処理し、滑らかな歪波形として負荷制御系にフィードバックすることで、極めて高精度な歪変化を試験片に与えることができました。
この試験装置を使用しJMTRにおいて照射温度550℃で1.4〜3.4×1025 /m 2 (E > 0 .1 MeV)まで中性子照射したステンレス鋼製試験片を対象に、550℃の真空中で歪0.7%、1.0%、1.4%の軸歪制御による低サイクル疲労試験を行い、中性子照射によるステンレス鋼の疲労寿命低下の定量的データを国内で初めて取得することに成功しました(図12-5)。



参考文献
I. Ioka et al., Effect of Helium to dpa Ratio on Fatigue Behavior of Austenitic Stainless Steel Irradiated to 2 dpa, J. Nucl. Mater., 283, 440 (2000).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果 2001
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