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成るか? ブランケットの発電効率向上




図11-4 Be12TiとSUS316LNとの両立性試験結果

構造材料であるSUS316LNとの両立性試験の結果、Be12TiはSUS316LN側に生成する反応層がベリリウム金属に比べて約1/10と小さいことを確認しました。



図11-5 Be12Tiのスエリング特性試験結果

5×1020 n/cm2 (E>1 MeV)、500℃の条件で中性子照射したBe12Tiを1100℃で加熱した結果、Be12Tiはベリリウム金属に比べてスエリングが約1/40以下と小さいことが判りました。



図11-6 Be12Tiの熱伝導率

5×1020 n/cm2 (E>1 MeV)、500℃の条件で中性子照射したBe12Tiは、未照射試料に比べて熱伝導率が低下しますが、使用温度範囲で充分な大きさであることが判りました。



 中性子増倍材料としてこれまでベリリウム金属が取り上げられ、調査・研究が行われてきました。その結果、ベリリウム金属は高温でスエリングが起こり、機器破損の恐れがあるなど、高温化(600〜900℃)によって高い発電効率を目指す発電炉には使用できないことが指摘されていました。
 私たちはこの問題を解決するために、融点が高く、化学的に安定で、スエリングが小さいなどの特長を有するベリリウムの金属間化合物に着目し、その使用可能性を研究してきました。Be12Ti、Be12V、Be12Moなどのベリリウム金属間化合物について、中性子増倍効果、低放射化性、製作性等の観点から調査・検討を行いました。その結果、製作性に特に優れているBe12Tiを取り上げ、必要な基本的特性を評価しました。
 ブランケット構造材料であるSUS316との両立性試験の結果、800℃において反応層の厚さはベリリウム金属の約1/10と小さく(図11-4)、またJMTRを用いた中性子照射試験によりスエリング特性を調べた結果、ベリリウム金属の約1/40という優れた特性を有する(図11-5)ことが判りました。中性子照射したBe12Ti試料の熱伝導率を測定した結果、熱伝導率は照射により低下しますが、高温でアニーリング効果により回復し、使用温度範囲(600〜900℃)では充分な大きさであることも判りました(図11-6)。
 これらの結果から、ベリリウム金属間化合物Be12Tiは高温発電ブランケット用中性子増倍材料として必要な特性を有することが明らかとなりました。
  今後は、微小球製造技術を開発し、高温発電ブランケット用中性子増倍材料としての実用化を目指します。



参考文献
H. Kawamura, Status of Beryllium in Japan, JAERI-Review 2002-011 (2002).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2002
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