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ITER 第1壁を模擬したホットセル内熱サイクル試験に成功






図11-5 インセル加熱試験装置に取り付けたベリリウムと銅合金を接合した模擬試験体

中性子を照射するため小型にした試験体を、遠隔操作で効率的に取り付けられる構造としました。



図11-6 ベリリウムと銅合金を接合した試験体の熱サイクル試験結果の例

除熱性能の劣化が生じたType 2では、試験後破壊検査の結果、接合部の剥離が観察されました。



 ITERの真空容器内第1壁は、表面のベリリウムと銅合金とが接合された構造体で、プラズマから受ける熱を冷却水に逃がす役割を担っています。第1壁は中性子による照射及び繰り返し熱負荷を受ける環境で使用されても破損しないように、設計する必要があります。中性子照射される第1壁模擬試験体の耐久性データを取得するため、ホットセル内で繰り返し熱負荷を加えることができる試験装置を開発しました。
 開発に際しては、中性子照射材を用いるため、小型にした試験体に効率よく加熱、除熱を繰り返し負荷することが求められました。そこで、電子ビームによる熱負荷と冷却水による除熱装置の設置を遠隔操作で効率的に行えるように工夫しました。すなわち、図11-5に示すような小型の試験体を製作し、中性子照射を行った試験体でも耐熱ゴム製Oリングで両端部を締め付けて試験装置への取り付けを容易にできるようにしました。さらに、試験体のベリリウム面を電子ビームで加熱し熱負荷を繰り返し与え、試験体内部を冷却水で除熱し、温度変化を赤外線カメラで精度よく測定できるようにしました。
 この装置を用いてITERの第1壁の候補材であるベリリウム(Be)と銅合金(DSCu:アルミナ含有率0.5%)を接合した試験体について、熱サイクル試験を行いました。試験体は、異なる中間層を有する2種類を高温等方加圧(HIP)接合方法で製作しました。熱サイクル試験時の熱負荷は、5 MW/m2で15秒加熱、15秒冷却を1000サイクル繰り返して与えました。結果を図11-6に示します。Type1試験体で、良好な除熱性能を維持しましたが、Type2試験体ではコーナー部で冷却遅れが確認され、接合部に剥離が生じていました。以上のように、中性子照射された第1壁を模擬した試験体の熱サイクル試験が可能となり、設計データの取得に寄与できます。



参考文献
M. Uchida et al., Heat Load Test of Be/Cu Joint for ITER First Wall Mock-ups, J. Nucl. Mater., 307-311, 1533 (2002).

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たゆまざる探究の軌跡−研究活動と成果2003
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