公開日付: 2025年 12月 23日
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制御棒と強制冷却が無くても、高温ガス炉は自然に「静定する、冷える」ことを実証
-HTTR(高温工学試験研究炉)における安全性実証試験に成功-

図1 安全性実証試験の概要及び試験結果
試験開始15分後、負の反応度フィードバック効果*により原子炉出力はほぼ0まで低下しました。その後、輻射や自然対流によって熱が外部へ伝わり炉心温度が低下し、中性子を吸収するキセノン(Xe)ガスの濃度が減少することで、試験開始約14時間後に原子炉出力は一時的に上昇しますが、その後、約1.2 %で安定しました。燃料温度は、試験開始直後に一時的に上昇するものの制限値(1600 ℃)を超えることはなく、原子炉出力の降下に伴い約800 ℃程度で安定することを解析により確認しました。
高温ガス炉は、炉心に黒鉛、冷却材にヘリウムガスを使用しており、「炉心溶融が起きない」設計が可能な安全性に優れた原子炉です。この特長を活かして産業施設、化学プラント等のエネルギー需要地の近接に設置することを目指しています。高温ガス炉の優れた安全性を実証するため、HTTR(高温工学試験研究炉)を用いて、ブロック型高温ガス炉として世界で初めて定格出力(100 %)での安全性実証試験を実施しました。
この試験では、全てのヘリウムガス循環機(HGC)を停止させ炉心の強制冷却を無くし、さらに制御棒の挿入を防止することで、原子炉の安全確保の観点で最も重要な「止める」機能と「冷やす」機能の喪失を模擬しました。試験開始直後、炉心の温度は一時的に上昇しますが、負の反応度フィードバック効果*が働くことで、原子炉出力はほぼ0 %まで自然に低下しました。また、試験中、燃料温度は制限値(1600 ℃)を超えることはなく、放射性物質の閉じ込め機能が維持されることを確認しました(図1)。
以上の結果より、原子炉を強制的に冷却できない状況で制御棒を挿入しなくても原子炉は自然に「静定する、冷える」、さらに、放射性物質は閉じ込められるという、高温ガス炉の優れた安全性を実証しました。
* 負の反応度フィードバック効果(原子炉の自己制御性):炉心温度が上昇すると核分裂反応が抑制され、原子炉出力が自発的に低下する現象のこと。
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参考文献
外部論文: https://doi.org/10.1016/j.nucengdes.2025.114542
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