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公開日付: 2025年 12月 9日

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白金族元素が炉底に残留しにくいガラス溶融炉の開発
-東海再処理施設における廃止措置の推進-

図1 溶融炉の基本構造図:(a)現行溶融炉(2号溶融炉)及び(b)新型溶融炉(3号溶融炉)

図1 溶融炉の基本構造図:(a)現行溶融炉(2号炉)及び(b)新型溶融炉(3号炉)

3号炉では、高レベル放射性廃液に含まれる粒子状の白金族元素が炉底部に堆積せず、抜き出しやすくなるように、円錐の炉底形状を採用しました。

図2 白金族元素(RuO2)の排出率の比較

図2 白金族元素(RuO2)の排出率の比較

高放射性廃液を模擬した非放射性の水溶液を用いたコールド試験において、ガラス固化体1本(約300 ㎏)あたりの炉内に供給する白金族元素(RuO2)量に対して、流下により炉内から抜き出される白金族元素の割合(白金族元素の抜出率)を評価しました。縦軸は抜出率、横軸は評価対象としたガラス固化体を示しています。なお、前の流下で抜き出しできなかったRuO2が次の流下で抜き出される場合もあるため、抜出率は100 %を超える場合もあります。各ガラス固化体中のRuO2抜出率の平均を見ると、3号炉の方が2号炉より高い値を示し、ばらつきも少なく安定していることから、3号炉は2号炉と比較してRuO2の抜出性は向上しています。

東海再処理施設の廃止措置を推進する上で、施設内で貯蔵管理している高レベル放射性廃液を安全かつ着実にガラス固化処理していくことが必要です。

ガラス固化技術開発施設(TVF)の従来のガラス溶融炉(1号炉、2号炉)では、溶融炉の炉底構造が四角錐であることから、高レベル放射性廃液に含まれる白金族元素(Ru、Rh、Pd)が溶けたガラスと混ざり合わず徐々に炉底谷部に残り、ガラス溶融炉の運転に支障をきたすことが課題でした。白金族元素を効率よく炉内から抜き出すため、新型ガラス溶融炉(3号炉)(図1)では、実績のある運転方法の変更や大幅な構造変更を避けつつ、ガラスの模擬流体を用いた流動可視化実験や溶融炉運転シミュレーションを行い、炉底形状を円錐に設計変更しました。製作した3号炉にて、性能を確認するコールド試験(運転条件確認試験)を実施し、従来の炉よりも白金族元素が炉内に残りにくく、効率よく抜き出されることを確認し、安定した運転の見通しを得ることができました(図2)。

今後、3号炉をTVFに移設し、令和8年度から高レベル放射性廃液のガラス固化処理運転を再開する予定です。

著者情報
参考文献
朝日良光ほか, TVF3号溶融炉の炉底に関する詳細構造, JAEA-Technology 2021-026, 2022, 50p.
朝日良光, 刀根雅也ほか, TVF3号溶融炉運転条件確認試験, JAEA-Technology 2024-024, 2025, 271p.

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