公開日付: 2026年3月18日
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原子炉圧力容器の中性子照射による損傷の解明に向けて
-EXAFSを用いた極微細構造の分析-

図1 中性子照射による原子炉圧力容器材料の微細構造の変化(イメージ)*

図2 (a)EXAFSにより取得したイオン照射前後RPV鋼のCu原子周辺局所構造に対応するスペ クトル
及び(b)結晶構造欠陥モデルに対応したEXAFSスペクトルのシミュレーション結果
原子炉圧力容器鋼(RPV鋼)はCu, Mn, Ni原子等を含む低合金鋼です。原子炉運転中、RPV鋼は燃料から放出される中性子線に曝され、構成原子の一部がはじき出されて空孔や格子間原子と呼ばれる極微細構造が生じます。それによってCu原子クラスターや格子間型原子クラスターと呼ばれるミクロ組織が発達し(図1)、RPV鋼が脆化することが知られています。
RPV鋼の脆化をより正しく理解し評価するためには、その出発点と言えるこのような極微細構造をより精確に理解する必要があります。そこで、数Åの領域の結晶構造や配位数等を同定できる広域X線吸収微細構造(Extended X-ray absorption fine structure: EXAFS)を用いて、Cu原子等に関する極微細構造を調べました。対象はイオン照射(中性子を模擬)されたRPV鋼材です。図2(a)に示すCu原子に対応するEXAFSスペクトルから、RPV鋼の結晶構造は保持されている一方でCu原子に対する配位数の減少や結晶構造の歪みが生じたことが分かりました。さらに、想定される種々の欠陥構造で予想されるEXAFSスペクトル(図2(b))との比較により、観察された極微細構造は空孔欠陥もしくは引張型配置のダンベル型格子間原子と考えられることが分かりました。
今後は、中性子照射されたRPV鋼にも適用することで、RPV鋼で生じる損傷のさらなる解明が期待されます。
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