公開日付: 2025年 12月 18日
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ウラン粒子を証拠に隠れた原子力の利用を見つける
-ウラン粒子から正しい同位体組成を得る方法-

図1 大型二次イオン質量分析装置とマイクロマニピュレーションを用いたウラン粒子の新スクリーニング手法と従来法の比較
縦軸は235U atom%、横軸はウラン二次イオンの計数率を示し、横軸は値が大きいほど大きな粒子と解釈できます。試験試料には4種のウラン同位体組成(235U atom%=1, 10, 35, 85)が含まれます。従来法によるスクリーニング結果では4種の組成に一致しない結果が含まれています(図中の〇点)。一方で、マイクロマニピュレーションを用いた新手法によるスクリーニング結果(図中の△、☐、◇の点)は4種の組成と一致する正確な結果が得られています。
保障措置環境試料には極微量のウラン(U)やプルトニウム(Pu)といった核物質が付着しており、世界中の原子力施設でIAEAの査察官によって採取されています。この試料の分析結果を元にIAEAは未申告で行われる原子力の利用を検認しています。そのため、保障措置環境試料の分析には極めて高い正確さと精度が要求されます。
保障措置環境試料中のU粒子分析に用いられる方法の一つに、二次イオン質量分析法(SIMS)があります。従来のSIMSを利用した分析では、U粒子を試料台に回収する時に、複数のU粒子が凝集してひと塊になる課題がありました。異なる同位体組成を持つU粒子同士が凝集した状態を1個のU粒子と誤認して分析を進めると、凝集体の平均化された同位体組成が得られ、試料内に存在しない不正確な同位組成が測定結果に含まれることがあります(図中の〇点)。
そこで、走査型電子顕微鏡(SEM)でU粒子を観察しながら、ひとつずつマニピュレーターで分離するマイクロマニピュレーション技術を使用し、試料台上でU粒子を凝集させないよう等間隔に配置してからSIMSで分析する方法を試みました。その結果、図中の△、☐、◇の点のように試料の同位体組成分布を正確に測定することに成功しました。マイクロマニピュレーションによってU粒子の凝集を解消することで、より正確な保障措置環境試料のSIMS分析が可能になりました。
謝辞
本研究には原子力規制庁から委託を受けて実施した「保障措置環境分析調査」の成果の一部が含まれます。
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